ママやパパ世代のなかには、学校や地域のプールで腰洗い槽を使用していた記憶がある方も多いのではないでしょうか。
実は、腰洗い槽は2023年現在、多くの学校で廃止されています。
ここでは、腰洗い槽とはそもそもどういうものなのか、また、いつ頃から、なぜ使用されなくなったのかを解説します。
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プールの腰洗い槽とは?目的や使い方
プールの腰洗い槽が、どのような目的で設置され、どのように使うものだったのかを解説します。
腰洗い槽とは?目的と効果
腰洗い槽とは、プールの前に身体の消毒をするために浸かる、ちょっと窪地になった設備です。
プールの中には高濃度の塩素が入った水が張られ、腰から下をその水に浸けることで殺菌を目的としています。
腰洗い槽が導入された昭和30年代頃は、プールの衛生管理が難しかったこともあり、プール熱や結膜炎などの感染予防対策として取り入れられていました。
学校のプールは一度に多数の生徒が入ることから、シャワーで丁寧に洗い流す時間がなかったことも、腰洗い槽が設置されていた理由の一つです。
腰洗い槽が設置された理由と歴史
腰洗い槽の歴史は、1957年に岐阜県大垣市でプール熱(咽頭結膜熱)が大流行したことに始まります。
岐阜県薬科大学のグループがプール熱の原因菌であるアデノウイルスからの感染を防ぐため、高濃度の塩素を入れた腰洗い槽を提案しました。
大垣市のプールで実験的に導入されたのち、1964年には正式に塩素の量を50mg〜100mg/Lと定め、プールの付属設備として全国的に広まっていきました。
腰洗い槽の塩素濃度はどのくらい濃い?
学校のプールの遊離残留塩素濃度は、学校環境衛生基準では0.4mg/L以上、1mg/L以下と規定されています。
一方で、腰洗い槽の塩素濃度は50mg〜100mg/Lを推奨しており、プールの塩素濃度と比較すると約50〜250倍の濃さです。
水道水の塩素濃度が0.1mg/L以上であることを考えると、プールや腰洗い槽には多くの塩素が含まれていることがわかります。
腰洗い槽の使い方
腰洗い槽は、腰から下を浸けて10秒ほど数えて出ていくのが一般的です。
顔についたり目に入ったりすると危険なため、腰洗い槽に入る際は手を頭に乗せ、手が浸からないように指導された方も多いでしょう。
なかには、腰までではなく肩まで浸かることを指導していた学校もありました。
いずれにしても、腰洗い槽はかなり冷たく、嫌な思い出として残っている方も多いのではないでしょうか。
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プールの腰洗い槽の廃止はいつから?理由は?
2023年現在では、プールの腰洗い槽はほとんどの学校で廃止されています。
その背景や、いつ頃廃止されたのかを解説します。
プールの腰洗い槽の廃止はいつから?
かつてはプールの水の入れ替えが難しかったことから、衛生管理上、塩素濃度の高い腰洗い槽の使用が有効とされていました。
しかし、2001年に厚生労働省がプールの衛生基準を一部改定した際、マニュアルから「腰洗い槽を設置する」という項目を撤廃。
ろ過付きプールの導入によってプール本体の衛生面が向上し、シャワーで十分洗浄できると判断されたことから、原則不要となりました。
その後、文部科学省も原則不要としつつ、最終的な判断は学校長に任せると発表しています。
参考:文部科学省|学校環境衛生管理マニュアル平成30年度改訂版
プールの腰洗い槽の廃止の理由
プールの腰洗い槽が廃止になった理由は、ろ過付きプールによってプール本体の水質が向上したことに加え、腰洗い槽による消毒では十分な殺菌効果が得られないことがわかったことも影響しています。
山口県薬剤師会では、大腸菌を付着させた水着を、腰洗い槽と同等の塩素濃度の水に浸した場合と、水で洗い流した場合とで比べた実験を実施しました。
実験では、腰洗い槽の水に5分間つけた場合と、流水30秒の場合とでは同様の除菌効果であることが判明。
また、腰洗い槽の水に30秒〜1分間ほど浸しただけでは十分な除菌効果が得られないこともわかりました。
塩素による皮膚への危険性を考えると、シャワーで30秒間洗い流すほうが、より安全かつ有効な方法であると考えられたこともあり、腰洗い槽は廃止の方向に向かいました。
プールの腰洗い槽は現在でも使われている?
「学校環境衛生管理マニュアル平成30年度改訂版」によると、マニュアル作成時で95%を超える小学校でろ過付きプールが導入されており、腰洗い槽を使用する学校は大幅に減少しています。
しかし、浄化設備がないプールを使用している学校では水質管理が難しいことから、現在でも腰洗い槽を使用しているところもあります。
腰洗い槽を使用している学校でも、高濃度塩素に敏感な体質の子どもにはシャワーで対応するなど、身体に悪影響が出ないよう配慮されているようです。
プールから洗眼器もなくなった?
腰洗い槽以外の付帯設備として、プールから上がったあとに目を洗うための水道が設置されていたことを覚えている方も多いでしょう。
洗眼器と呼ばれるこの設備に関しても、昨今は推奨されておらず、多くの学校で使われなくなっています。
洗眼器とは?
洗眼器とは、目を洗うために上を向いた2つの蛇口が設置されたもので、かつては公共のプールに標準設備として設置されていました。
プールの水には水道水より多くの塩素が含まれていることから、プールから上がったあとに目に入った水を洗い流したり、感染症予防目的で利用されたりしていました。
洗眼器の廃止理由は?
厚生労働省は2009年、水泳中は眼表面粘膜を保護するためにゴーグルを装着するのが望ましいこと、また水泳後は水道水での洗眼を積極的に推奨しないことを発表しています。
目を水道水で洗うことで、目の粘膜を保護する涙の成分が洗い流され、ドライアイの原因になることもあるようです。
塩素が目に与える影響を考え、現在では洗眼器の設置をしている学校は少なくなってきています。
まとめ:親世代の常識とはプール事情も変化
昔は冷たい思いをして入るのが当たり前であった、プールの腰洗い槽。
現在では腰洗い槽はほとんどの学校で撤廃され、プールも安全に利用できる設備へと変化しています。
プールに限らず、学校生活の常識は時代とともに変わっているようです。
今後も子どもたちが安心して学校で過ごせるよう、最新情報をチェックしながらサポートしていきたいですね。
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