インフルエンザの本格的な流行を前に、予防接種を検討している方も多いのではないでしょうか。
私には、卵アレルギーのため日常生活で卵を除去している息子がいるので「インフルエンザや新型コロナのワクチンは接種できるの?」とよく聞かれます。
この記事では、卵アレルギーの方がインフルエンザ、MR、おたふくかぜ、新型コロナの予防接種を打つことについて、体験談を交えて紹介します。
目次
卵アレルギーだと打てないの?インフルエンザの予防接種で気になること
インフルエンザは、卵アレルギーの方が接種を迷うことが多い予防接種です。
インフルエンザの予診票や、病院の対応はどのようになっているのでしょうか。
予診票に卵アレルギーについての記載がある
インフルエンザ予防接種の予診票には「薬や食品(鶏卵、鶏肉など)で皮膚に発しんやじんましんが出たり、体の具合が悪くなったことがありますか」という質問があります。
また「予防接種を受けるにあたり、医師とよく相談しなければならない人」として「薬の投与または食事(鶏卵、鶏肉など)で皮膚に発疹が出たり、体に異常をきたしたことのある人」とも書いてあります。
参考:いわつき小児科クリニック「インフルエンザ予防接種予診票 任意接種用 2022/23シーズン版」
この部分を読むと「卵アレルギーだと接種できない」と考えてしまうのも無理がない気がします。
しかし、ここで注意しなければならないのは、卵アレルギーがある方は、妊娠の可能性のある方や今までけいれんを起こしたことがある方と同様に「医師とよく相談しなければならない人」であり「接種できない人」ではないことです。
医療機関によって判断基準がまちまち
卵アレルギーの方にインフルエンザの予防接種をおこなう基準は、医療機関によってまちまちです。
なかには「全身症状やアナフィラキシー既往者はNG」「血液検査が陽性でも食べられるならOK」など、基準をホームページに記載している病院もあります。
実際、卵アレルギーだとインフルエンザの予防接種は打てないの?
卵アレルギーがあっても、ほとんどのケースでインフルエンザワクチンを打つことができます。
日本アレルギー学会は
インフルエンザワクチンは製造する過程で有精卵が使われ、日本製のワクチンでは1mLあたり数ng(ナノグラム)の鶏卵タンパク質が混入している可能性がありますが、通常どおりに接種して重篤な反応が生じる可能性はきわめて低いレベルですので、医師に相談してワクチン接種を受けてください。
引用:一般社団法人日本アレルギー学会 アレルギーポータル
としています。
卵アレルギーで卵を除去しているわが子も、小学生の頃から毎年打っており、アレルギー症状が出現したことはありません。
そもそも卵アレルギーは何に反応して症状が起きる?
なぜ、予診票に「卵アレルギーの方は医師とよく相談する必要がある」と書かれているのでしょうか。
それを知るためには、卵アレルギーの仕組みを理解することが大切です。
アレルギーとは「好き嫌い」や「何となく体に合わない」というものではなく、免疫学的な機序によって体に症状が引き起こされることを言います。
私たちの体には「免疫」という病気を引き起こす異物(例えば、ウイルスや細菌など)から体を守る仕組みがあります。
この仕組みが、ある特定の異物(ダニやスギ花粉、食物など)に対して免疫が過剰に反応して、体に症状が引き起こされることを「アレルギー反応」といいます。
引用:一般社団法人日本アレルギー学会 アレルギーポータル
卵アレルギーの場合、症状を引き起こすのは主に以下のたんぱく質です。
鶏卵のアレルゲンの多くは、卵白に含まれる「オボアルブミン」と「オボムコイド」というタンパク質です。
引用:ヴィアトリス製薬株式会社
卵アレルギーと一言でいっても症状には個人差があります。
加工品なら食べられるけれど卵そのものはNGという方、ゆで卵はOKだけど生卵はNGという方、微量なら食べられるけど基本的に除去している方、ごく微量の卵の摂取でアナフィラキシー反応を起こす方。
皆「卵アレルギー」ですが、卵を摂取できる量と出現する症状には大きな差があります。
卵アレルギーの方がインフルエンザの予防接種を受ける際には「インフルエンザワクチンに卵のたんぱく質がどれぐらい含まれているか」と「接種を受ける卵アレルギーの方はどれぐらいの卵摂取量であれば症状が出ないのか」を考える必要があります。
インフルエンザワクチンに卵のたんぱく質はほとんど残っていない
インフルエンザワクチンは有精卵を使って培養しており、卵のたんぱく質がどれぐらい残存しているかは気になるポイントです。
日本アレルギー学会が運営している「アレルギーポータル」によると、日本製のワクチンでは1mLあたり数ng(ナノグラム)の鶏卵タンパク質が混入している可能性があります。
1ngは0.000000001gです。
予診票や問診で医師が確認しているのは「インフルエンザワクチンに残存する数ngの卵のたんぱく質でも症状が出るか」という点だと思われます。
ちなみに息子は、初めてインフルエンザの予防接種を受けるときのみ、治療に通っているアレルギー専門医にお願いしました。
そのあとはずっと、予約の取りやすい地域の小児科や内科で接種しています。
問診で医師から卵アレルギーのことを質問されたら「微量ですが食べられます」「去年もインフルエンザの予防接種を打ちました」と回答しており、これまで接種を断られたことはありません。
卵アレルギーだと麻疹風疹やおたふくかぜの予防接種は打てない?
麻疹風疹(MR)やおたふくかぜのワクチンは鶏の胚細胞を用いて作られます。
日本アレルギー学会は
鶏卵と関連性があるとされる3つのワクチンの中で、麻しん(はしか)風しん混合ワクチンであるMRワクチンと、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)のワクチンであるムンプスワクチンは、いずれもワクチンを製造する過程で使用されるのはニワトリの胚細胞であり、一般的な卵アレルギーの反応が生じる鶏卵タンパク質は含まれていないので安心して接種を受けることができます。
引用:一般社団法人日本アレルギー学会 アレルギーポータル
としています。
わが子もMRワクチンは定期接種のタイミングで、おたふくかぜのワクチンは幼稚園のときに地域の小児科で接種しました。
卵アレルギーだと新型コロナウイルスの予防接種は打てない?
新型コロナワクチン(mRNAワクチン)とアレルギーの関係は話題にのぼることが多く、日本アレルギー学会が声明を発表しています。
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのぜんそく以外のアレルギー疾患の方も、接種が可能です。
また、多くの食物や薬剤など接種するワクチン成分以外のものに対してアレルギーを持つ方も接種は可能です。
と述べる一方で
過去に新型コロナワクチン(mRNA ワクチン)に対してアナフィラキシーなど重いアレルギー反応を起こした方や、同ワクチンに含まれるポリエチレングリコール(PEG)に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方への接種は推奨しません。
引用:一般社団法人日本アレルギー学会|COVID-19ワクチン接種に関する学会声明について
としています。
新型コロナワクチン(mRNA ワクチン)は卵を用いて作られないため、卵の成分が含まれることはなく、卵アレルギーを理由に接種を控える必要はありません。
新型コロナワクチンの場合、問題になるのはワクチンの成分に含まれるポリエチレングリコール(PEG)やPEGと似た構造を持つポリソルベートのアレルギーです。
厚生労働省も
食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎や花粉症、じんま疹、アレルギー体質などがあるといった理由だけで、接種を受けられないわけではありません。
また、接種するワクチンの成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ方も接種は可能です。
引用:厚生労働省|新型コロナワクチンQ&A
と同様の見解を示しています。
新型コロナワクチンを接種できない方は
ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症の既往歴のある方
引用:厚生労働省|新型コロナワクチンQ&A
としており、卵アレルギーに関する記載はありません。
今後、卵を使って培養するワクチンが一般化したときには再検討する必要がありそうですが、現在主流のmRNAワクチンはこのような見解がなされています。
我が家では、心配だったためアレルギー専門医に相談し「息子のアレルギーに関係する成分はmRNAワクチンに含まれていないから問題ない」と言われたため、地域の内科と集団接種会場で接種しました。
ちなみに、これまでに重いアレルギー反応を起こしたことがある方は、接種後30分間の待機が求められます。
息子も30分待機しましたが、問題はありませんでした。
心配な場合はアレルギー専門医やアレルギーに詳しい小児科に受診を
インフルエンザワクチンには卵のたんぱく質が残存している可能性がありますが、症状が出るリスクは低いと考えられています。
しかし、それでも心配だという方もいるでしょう。
卵アレルギーであることを理由に病院で断られることがあるかもしれません。
心配な場合や他院で対応してもらえないときは、アレルギー専門医やアレルギーに詳しい小児科医を受診すると良いでしょう。
アレルギー専門医とは
アレルギー専門医は日本アレルギー学会が認定する資格です。
診察しているアレルギー患者数、アレルギー学の学会・論文発表、アレルギーに関係する学会への参加回数、アレルギー学会認定教育研修施設での診療経験年数を審査し、基準を満たした医師だけが筆記試験を受けることができます。
筆記試験に合格して初めて「アレルギー専門医」を名乗ることができ、厚生労働省からもアレルギー専門医として広告することを許可されます。
アレルギー専門医は小児科だけでなく、内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科など専門分野別に認定されていますが、子どもの予防接種の場合は小児科のアレルギー専門医にかかると良いでしょう。
アレルギー専門医と、勤務する病院名は日本アレルギー学会のホームページから検索できます。
わが子は複数の食物にアレルギーがあり、乳児期からアレルギー専門医を受診しています。
食事の指導や園・学校への手続き、検査、負荷試験といった専門的な治療やケアが必要なケースでは、アレルギー専門医の受診がおすすめです。
一方で、アレルギー専門医は大きな都市に集中する傾向があり、受診しづらい地域もあります。
そうした場合は、専門医資格にこだわらず、口コミなどでアレルギーに詳しい小児科を調べると良いでしょう。
日本の医療現場は自由標榜制で、医師はどの診療科目も看板などに記載して自由に標榜できます(麻酔科を除く)。
アレルギー科と書いてあるからといって、アレルギー専門医だとは限らないことも覚えておきましょう。
「卵アレルギー=接種NG」とは限らない
「卵アレルギー=予防接種NG」ではありません。
インフルエンザワクチンに含まれる卵のたんぱく質の残存量は数ngと微量なので、ほとんどの方は問題なく接種できますし、卵の胚細胞を使うMRワクチンやおたふくかぜのワクチン、卵を使用しない新型コロナワクチンの接種は、卵アレルギーを理由に控える必要はないと考えられています。
予防接種の前には必ず問診があるため、医師に相談して不安を解消し、リスクとベネフィットを理解して接種を判断すると良いでしょう。
アレルギー専門医などアレルギーに詳しい医師のもとで接種する方法もあります。
ママライタープロフィール
中学生と高校生の息子たちを子育て中のママライター。(※原稿執筆時)
息子たちの興味に合わせて、鉄道、天体観測、自学などを楽しんできましたが、思春期になったいま、息子との会話は専らスポーツ観戦です。
DIYやお笑い鑑賞、フリマアプリで不用品を売ったり、ポイ活をしたりと、種類を問わず興味のおもむくままに楽しんでいます。