専業主婦だった方が、子どもを連れて自立しようと考えているということは、それなりの事情があることでしょう。
パートナーからのDVなど、親子にとって安全ではない状況にある場合はなおさら、早期のアクションが必要です。
現在はパートナーに経済的に依存していても、別居を契機に自分の経済的自立の基盤を築くことは、将来の自分と子どもを守ってくれます。
本シリーズでは、シングルマザーが自分らしく生きていくためのお役立ち情報をご紹介しています。
今回のテーマは「専業主婦からの子連れ離婚と自立までのステップ」です。
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目次
監修者プロフィール
NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心と体の健康を支援する団体です。
子育ての責任を一手に担うシングルマザーが、自分の身体や心をケアする時間を持ち、地域を超えて交流することで、互いを励まし合えるような機会を提供しています。
※当団体の講座は寄付金や助成金で運営されているため受講料は無料です。
専業主婦は今や少数派に
統計表(専業主婦世帯と共働き世帯)をもとに筆者が作成
キャリアにブランクがある、働いたことがないなど専業主婦からワーキングマザーになるハードルを感じている方は多いと思いますが、実は専業主婦の割合は年々減少しています。
総務省の調査によると、1980年には64.5%だった専業主婦世帯は、1996年には50.2%と半数になり、2022年には29.9%と少数派になりました。
とはいえ、専業主婦が子連れで離婚し、自立していくには勇気が要ります。
それでも、自信がないのは最初はみんな同じ。
小さな一歩からコツコツとキャリアを積み上げていくことは可能です。
データ出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 専業主婦世帯と共働き世帯 1980年~2022年
精神的にも物質的にも自立するメリット
女性が経済的に自立することは、精神的な自立にもつながっていきます。
自分で収入を得て、生計を立てられるようになれば、誰かにお伺いを立てることなく、自分らしく、自分の人生を生きていくことができます。
自己決定権を回復できる
あなたが精神的にも物質的にも自立することで、自己決定権を取り戻すことができます。
パートナーから行動を制限される生活から解放され、自分自身と子供たちの未来を自分で決定し、コントロールできるようになります。
本来、経済的に家族を支えている者が、配偶者や家族の行動を制限したりするようなことはあってはならないのですが、妻が配偶者に経済的に依存している場合、残念ながらその依存が悪用されてしまう場合があります。
経済的な依存があると、被害者は抵抗しにくくなり、精神的DVやモラハラがエスカレートしやすくなります。
自己決定権を手放すことなく、人生の手綱を自分で握るためには、精神的にも物質的にも自立していることは、その助けになります。
子どもの安全と福祉を守ることができる
あなたが精神的にも物質的にも自立することで、子どもを安全な環境で育てることができます。
子どもたちの安全と心理的な健康を確保することは、親として最も優先すべきことですが、配偶者に経済的に依存していると、DVや虐待があったときにすぐに逃げることができず、親子の安全がおびやかされます。
子どもの安全と福祉は何をおいても守られるべきであり、もし親子の安全が今、おびやかされているのであれば、自分が経済的な自立を果たすことを待たずに、児童相談所などの相談機関に相談をするなど、すぐにアクションを起こすことが必要です。
親権や財産分与、養育費など離婚までに決めること
専業主婦が離婚するまでには、たくさんの作業があります。
親権者の決定、養育費の決定、共有財産の調査、面会交流方法の決定、年金分割の準備、婚姻費用の計算、離婚協議書の作成など、どれも気が重くなる作業であり、気が遠くなるほどのプロセスですが、やるべきことを整理して、ひとつひとつ片付けていくことで、確実にゴールに近づくことができます。
必要であれば弁護士など、そのプロセスに伴走してくれるサポーターの力を借りながら、一歩一歩進めていきましょう。
【必見!】離婚のためのやることリスト!子連れの場合の準備とは?
【いつまで?】養育費は何歳までもらえるの?成人年齢が変わったらどうなる?
【シングルマザーお役立ち情報】離婚後の面会交流、どうする?
生活費のために。公的支援や家計シミュレーションのすすめ
今、自立してバリバリ働いているように見える人も、最初からそうだったわけではありません。
どんな人にも最初の一歩があります。
一歩を踏み出したら、二歩目があり、三歩目があります。未来を見据えてコツコツ経験を積んでいきましょう。
最初からたくさん稼げなくてもいいのです。
児童扶養手当や児童手当など公的支援の力も借りながら、どのくらい稼いで、どんなふうにやりくりすればよいか、まず家計をシミュレーションして手応えをつかみましょう。
児童扶養手当などの公的支援の助けを借りよう
児童扶養手当などの公的支援は、社会的な公平性や経済的な安定を促進し、特に困難な状況にある人々や家族に支えを提供するために設けられています。
こうした支援を受けることは、国民の権利ですから、支援を受けることに引け目を感じる必要はありません。
今のあなたの状況で受けられる公的支援を調べ、受け取れるものはしっかり受け取れるよう申請しましょう。
こうした公的支援で受け取れる金額を考慮して、自分がどのくらい稼げばいいか?
まずは最低限の金額を出してみましょう。
家計シミュレーションのススメ
まずは家計のシミュレーションをして、最低限必要な金額を見極めましょう。
最初から元配偶者と同じくらい稼がなくては!などと気負う必要はありません。
まず、家計に必要な支出項目(住居費、 通信費、光熱費、食費、日用品、交通費、医療費、被服費、教育娯楽費、特別費、学資保険、貯蓄)ごとに、必要最低限の予算を立てましょう。
収入の項目には、公的支援で得られる児童手当、児童扶養手当や養育費(別居中の場合は婚姻費用)を書き込み、自分の収入を足して、このくらいあれば赤字にならない、というラインを把握します。
このように、家計の見通しが立つと、漠然とした不安がなくなり、足元から一歩一歩、歩んでいくことができます。
子どもの年齢によって変化する働き方
子どもを預けられる時間、子どもの世話に手がかかる時間なども、子どもの年齢によって変化します。
焦って無理をして、親子でダウンしては本末転倒です。
焦らずに、長期的なビジョンを持って、キャリアをプランニングしましょう。
子どもが乳幼児の時
子どもが乳幼児の時には、保育園で朝8:00から夕方17:00まで預かってもらえるものの、着替えやトイレのお世話、食事やお風呂、寝かしつけなどにも手がかかり、時には熱を出して保育園から電話がかかってきてお迎えに行かなければならない、という事態も頻発するかもしれません。
体力的にも、精神的にもギリギリというのが現実でしょう。
そんなときに焦って無理をしてしまうと、自分自身の体調も崩しやすくなり、それを察知するのか子どもも熱を出しやすくなったりするものです。
とにかくこの時期は、焦りは禁物です。
保育園の年中〜年長くらいの子ども
子どもが保育園の年中〜年長くらいになってくると、着替えやトイレ、食事も自分でできるようになります。親子の会話も楽しんでできるようになり、熱を出して呼び出される回数も減ってきて少し余裕が出てくるかもしれません。
小学生の子ども
小学生になると、保育園の時のように送り迎えの負担はなくなりますが、夏休みや冬休みの過ごし方を考えなければならないのは大変です。
高学年になり学童クラブがなくなると、以前のように保育園や学童クラブのような子どもの見守りをともに担ってくれる存在がいなくなるので、心細く感じるかもしれません。
その代わりに、PTAや地域の習い事などで仲良くなった保護者の仲間が、一緒に我が子を見守ってくれるかもしれません。
そんな仲間作りも意識して過ごすとよいでしょう。
中学生、高校生の子ども
中学生、高校生になってくると、物理的には手がかからなくなりますが、精神的なケアは必要です。
ただ、この頃になれば、お母さんが働いていることは子どももよく理解し、誇りに思ってくれることでしょう。
保育園や小学生の頃よりも、キャリアにギアを入れやすくなる頃です。
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キャリアの棚卸しをしよう
過去に少しでも働いた経験がある人は、まず、自分の仕事の経験を書き出して、自分を棚卸ししてみることをおすすめします。
アルバイトでも、その仕事の経験から得たものはあるはず。
自分がどんなふうに力を発揮できるか、振り返って考えてみましょう。
自分では大した経歴はないと思い込んでいても、リストにしてみると、それなりに意味のある自分のキャリアヒストリーを見出すことができるはずです。
自分のスキルや興味を振り返る
キャリアの棚卸しをする際、パート、アルバイト、ボランティア、すべて書き出してください。
自分では取るに足らないと思い込んでいることも、社会にとっては価値のあることかもしれません。
そこでどんな経験をしたか、どんな価値を提供したか、それによってどんなスキルが身についたか、自分の興味・関心はどこに向いていたか、書き出して振り返ってみましょう。
こうした振り返りは、これからのキャリアの方向性を考えるのに役立ちます。
専業主婦の経験をキャリアに活かす方法
企業にお勤めしたり、パート・アルバイトもしたことがないという場合も、あきらめないでください。
働いた経験がなくても、専業主婦としての経験をキャリアに活かすことができるかもしれません。
料理やお掃除のスキル、子育てやコミュニケーションのスキルなど、自分のスキルとして考えましょう。
それによって何らかの価値提供ができれば、それは仕事につながります。
今は、どの職場も人手不足。
やる気があって、真摯にキャリアを築こうとしている人は、重宝されます。
キャリアコンサルティングを受けてみよう
「どのような仕事を選べばいいか分からない」「自分に向いている仕事が分からない」という方は、有資格のキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けて、今後の就職活動の方針を練るのがおすすめです。
ハローワークでは無料でキャリアコンサルティングを受けられます。
ハローワークは全国に544か所設置されているので、お近くのハローワークを調べてみてください(2023年9月現在)
参考:ハローワークの就労支援
専業主婦からキャリアを積む方法
どんな人にも最初の一歩があります。最初から自信のある人なんていません。
少しずつ経験を積み重ねながら自信をつけていけば良いのです。
まずは、パート、アルバイトからでもOK。
未経験歓迎のお仕事もあります。まずは、キャリアの足掛かりをつかむこと。
そこから経験を積んでいきましょう。
未経験歓迎のお仕事につく場合、あまり高い賃金を期待することはできません。
その時に大事なのは、その次のステップを考えながら働くことです。
そのお仕事がなぜその賃金なのか、もっと高い賃金を手にするためには、どんなスキルや経験が必要で、この場所からどのように動いていけばよいかを考えることが大事です。
デジタルスキルは必須。パソコンを手に入れブラインドタッチから
高度にデジタル化された現代社会ではどの業界で働くとしてもデジタルスキルは必須です。
「パソコンはできません」という人にも割り当てられる仕事はありますが、高い賃金は望めません。
キャリアの選択肢を広げるためにも、パソコンを持っていない方は、中古でもいいので自分のパソコンを手に入れましょう。
ワード、エクセルなどを触る前に、まず身につけていただきたいことがあります。
パソコンを手に入れたらまずはブラインドタッチを習得してください。
ブラインドタッチはできて当たり前の時代。
1週間も練習すればすぐにできるようになります。
できなかったことができるようになることで、小さな自信がつきます。
自信をつけるためには、こうした小さな自信の積み重ねが大事です。
職場のリーダーとコミュニケーションを
仕事が決まり、緊張と不安の初出勤。
最初は、言われた仕事をしっかりこなすところからのスタートになるでしょう。
その時に、漠然と仕事をこなすのではなく、その仕事を指示してくれている上司やリーダーをよく観察することをおすすめします。
彼/彼女らが、どんな意図を持って、どんな言葉を使ってそれを指示しているのか?
しっかりメモをとって、理解し、わからないことがあれば、積極的に質問しましょう。
自分が彼/彼女らの立場になったら?という視点をいつも持つようにしましょう。
向上心があり、実行力がある人には、必ずチャンスが与えられます。
職場でも、自分の向上心と実行力を知ってもらえるよう、行動していきましょう。
責任のある仕事を任せてもらえる人になろう
誰にでもできる簡単なお仕事を続けている限りは、賃金は上がらないし、キャリアも積み上がっていきません。
労働時間を提供し、その時間分のお給料をもらうだけで時が過ぎていきます。
そのような状態にとどまらないようにすることが大切です。
言われた仕事をこなすのは最初の一歩。
お仕事に慣れてきたら、自分から改善案を出したり、新しい企画を提案したり、それを実現するためにプロジェクトをリードするなど、主体的に物事を動かしていく立場になれるよう、意識的に仕事に関わっていきましょう。
【体験談】専業主婦からワーキングマザーへ
Aさんは保育園の年少さんの男の子を抱えて離婚、未経験からコールセンターのオペレーターの仕事につきました。
女性の多い職場で、子育てにも理解があり、まずは契約社員としてコールセンターのお仕事を覚え、地道にこなしていく、ということを2年続けました。
その頃の収入は16万円、児童扶養手当をもらいながら何とかやりくりしていました。
子どもがもうすぐ小学生になるというタイミングで、人材育成のチームに抜擢されオペレーターのトレーニングをする立場に。
自分も未経験からのスタートだったので、トレーナーになってからもトレーニーの気持ちに寄り添ったトレーニングの姿勢が評価され、新たなトレーニングプログラムの開発まで任されるようになりました。
収入も20万円に届くように。
さらに3年後には社内企画の募集があり、ダメもとで応募。
その意欲が買われて商品企画の部署へ移動、1年後には自分が提案したプロジェクトが採用されリーダーに。
役職手当もついて、入社時よりもかなり収入がアップしました。
Aさんは、コールセンターのオペレーターとして入社した時に「オペレーターで終わるつもりはない」と決めていたそうです。
面接でも、学ぶ意欲やチャレンジ精神をアピールしました。
Aさんは履歴書に書けるような資格は持っていなかったそうです。
それでも、仕事に必要なスキルは、実践しながら身につけてきました。
社内企画に応募した時には、企画書の書き方もわからないところから、初めて企画書というものを形にし、初めてスライドを使ってプレゼンをしました。
パソコン教室に通う暇もありませんでしたから、スライドを作りながら操作を覚え、わからない機能はネット検索して調べつつ、プレゼンスライドを完成させたと言います。
Aさんには真面目にコツコツ仕事をこなすだけでなく、その中からの気付きを次の仕事につなげるということをしてきました。
必要なことはその都度学んでいきました。
Aさんのように、最初から立派なスキルがなくても、まず目の前の仕事から次のステップにつなげていくことは十分可能なのです。
社会とつながる豊かさを大切に
自分の力を発揮して貢献するという形で社会につながることは、消費者として社会とつながるのとは違った次元の豊かさがあります。
シングルマザーになって働かなければならないから働く、という消極的なマインドから、社会と繋がって自分の力が発揮するために働くという積極的なマインドセットにシフトできると、稼げる金額も変わってきます。
低賃金の仕事にとどまるのではなく、しっかり自分の仕事が評価されて報酬が受け取れるようキャリアを積み重ねていきましょう。
子育てをしながらでもそれは可能ですし、そんな姿を子どもに見せていきたいですよね。
国民の基本的人権を「永久の権利」と宣言した日本の憲法では、働くことについての権利も明文化されています。
自分らしく生きるために、働いて自立していくことは素晴らしいことです。希望を持って最初の一歩を踏み出しましょう。
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