子どもの食物アレルギー検査はいつ、どこでする?血液検査には注意も必要!

赤ちゃんと食材のイラスト

子どもに食物アレルギーがあるのではないかと心配で、アレルギー検査を希望する方は注意が必要です。

食物アレルギーの検査の活用や治療は日進月歩。

複数あるアレルギー検査のなかから食物アレルギーの診断に使える検査を受け、検査結果を正しく読み解いてくれる医師にかかることが、その後の治療方針にも影響します。

食物アレルギーのあるわが子は、乳児期から高校生の現在まで、さまざまなアレルギー検査を複数回おこなってきました。

いつ、どのタイミングでどのような検査をしたか、体験談をご紹介します。

※記事の内容には個人の体験が多く含まれます。症状や状況には個人差があるため、参考程度にとどめ、詳細は医療機関に相談してください

ママライタープロフィール

ayu

15歳と19歳の息子を持つ福岡在住のライター。(※原稿執筆時)
情報誌勤務を経てフリーランスのライターとして活動中。
DIYやお笑い鑑賞、フリマアプリで不用品を売ったり、ポイ活をしたりと、興味のおもむくままに楽しんでいます。
息子たちには野球マニア、潮干狩りのプロと呼ばれています。

食物アレルギーとは

アレルギーとはウイルスや細菌など、病気を引き起こす異物から体を守る”免疫”が、特定の異物(花粉、ダニ、食べ物など)に過剰に反応して起きる症状のことです。

なかでも食物アレルギーは

「本来は体に害を与えない食べ物を異物と勘違いし、免疫反応が過敏に働いてしまう現象」。
国立成育医療研究センター|食物アレルギーとは

といいます。

本来は体にとって害ではない食べ物を、なぜ異物と判断してしまうのでしょうか。

原因のすべてが解明されているわけではありませんが、炎症やダメージのある体の部位に食べ物が触れることで、食べ物を異物として判断する「感作(かんさ)」が起き、その食べ物を口から食べたときに免疫反応が過敏に働いてしまうことがわかっています。

食物アレルギーの主な症状は、蕁麻疹(じんましん)、痒み、咳、腹痛など。

粘膜症状(鼻水、口腔の違和感など)や神経症状(頭痛、意識障害など)、循環器症状(血圧低下など)なども食物アレルギーの症状です。

原因となる食べ物を食べたあと、短時間のうちに全身性のアレルギー反応が起きる”アナフィラキシー”や、血圧の低下や意識障害といった命にかかわる危険な”アナフィラキシーショック”を引き起こすこともあります。

食物アレルギーの原因となる食べ物

日本では、卵、牛乳、小麦が原因の70%を占めていますが、ピーナッツ、魚介類、果物類、蕎麦、甲殻類などもアレルギー症状を引き起こすものとして知られています。

なかでも「えび、かに、くるみ(※)、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)」の8品目は重篤な症状を起こしやすいため、食物アレルギーの義務表示対象品目(特定原材料)に指定されています。

※「くるみ」は2023年3月9日に追加されたため、「くるみ」を含む食品のアレルギー表示は2025年3月31日まで猶予期間が設けられています

参考:
国立成育医療研究センター|食物アレルギーとは
一般社団法人日本総菜協会|(消費者庁)「くるみ」のアレルギー表示が義務になりました
アレルギーポータル|原因になりやすい食物はあるのですか

食物アレルギー検査の種類

アレルギー検査の結果表

原因となる食物を特定するために、血液検査(特異的IgE抗体検査)、皮膚テスト(プリックテスト)、食物経口負荷試験がおこなわれます。

血液検査(特異的IgE抗体検査)

食物アレルギーには血液中にある「IgE抗体」という免疫物質が関係しています。

アレルギーがある方は食べ物、スギ花粉、ダニといったアレルゲンに対して固有のIgE抗体(特異的IgE抗体)が作られていて、IgE抗体にアレルゲンが結合することでアレルギー反応が起きます。

特異的IgE抗体検査では、血液中のIgE抗体を調べ、何が原因でアレルギー反応が起きているかを調べます。

200種類以上のアレルゲンを調べることができますが、保険診療で測定できる項目数には上限があるため、可能性の高いアレルゲンを絞って調べるのが一般的です。

検査結果は各アレルゲンに対する測定値とクラス(分類)で表示されます。

クラスは0~6段階で表され、クラス0は陰性、クラス1は偽陽性、クラス2~6は陽性です。

IgEの数値が高いほど強く感作されているということを表しますが、検査結果が陽性でも、食べて症状が出なければ必ずしも食物アレルギーがあるとは診断されません。

皮膚テスト(プリックテスト)

プリックテストは、皮膚のうえにアレルギー物質が含まれるエキスを置き、プリックテスト専用の針で軽く刺して小さな傷をつけておこないます。

アレルギーの可能性があると、約15分の間にじんましんが出現します。

血液検査のようにIgE抗体を直接証明するものではありません。

食物経口負荷試験

血液検査(特異的IgE抗体検査)や皮膚テスト(プリックテスト)で、食物アレルギーが起きる可能性は診断できますが、確定診断を下すことはできません。

IgE抗体が高い数値を示していても、実際には食べられるケース(逆のケースも)があるからです。

確定診断をするためにおこなうのが、食物経口負荷試験です。

食物経口負荷試験では、問診、血液検査、皮膚テストで疑われた食べ物を、医療体制の整った病院内で実際に食べてみます。

重篤な症状が出る可能性もあるため、どの病院でもできるわけではありませんが、症状が出れば陽性、出なければ陰性だと診断できます。

参考:
アレルギーポータル|アレルギーとは
アレルギーポータル|アレルギー検査について
国立成育医療研究センター|食物アレルギーとは

血液検査が一般的だが注意点も多い

人差し指を立てる医師

食物アレルギーの疑いがある場合、血液検査は最初におこなわれることが多いポピュラーな検査です。

しかし、血液検査と一言でいってもさまざまな種類があり、なかには学会が注意喚起をしているものもあります。

また、血液検査の結果だけで不必要な除去をすると悪影響があることも。

血液検査を受けるときの注意点を解説します。

血液検査で陽性=食物アレルギーとは限らない

食物アレルギーをIgE抗体の数値だけで確定診断することはできません。

IgE抗体は症状がなくても検出されることがあり、血液検査で陽性だと判定されても、実際には食べられたというケースがあるからです。

たとえ、血液検査で陽性となっても、経口負荷試験をおこなって「食べて症状が出るかどうか」で判断し、治療方針を決めます。

わが子の場合、乳児期におこなった血液検査で大豆が高い数値を示していましたが、経口負荷試験の結果、食べられることがわかり、それ以降、除去せずに食べています。

IgG抗体を調べる検査は食物アレルギーの診断には使えない

IgE抗体ではなくIgG抗体検査(食物抗原特異的IgG抗体検査、いわゆる遅延型フードアレルギー検査)には注意が必要です。

アメリカ、ヨーロッパのアレルギー学会、および、日本小児アレルギー学会、日本アレルギー学会は、IgG抗体検査で食物アレルギーだと診断することを、公式に否定しています。

その理由は

①食物抗原特異的IgG抗体は食物アレルギーのない健常な人にも存在する抗体である。②食物アレルギー確定診断としての負荷試験の結果と一致しない。③血清中のIgG抗体のレベルは単に食物の摂取量に比例しているだけである。④よって、このIgG抗体検査結果を根拠として原因食品を診断し、陽性の場合に食物除去を指導すると、原因ではない食品まで除去となり、多品目に及ぶ場合は健康被害を招くおそれもある。
引用:日本アレルギー学会|血中食物抗原特異的 IgG 抗体検査(IgG4 などのサブクラス抗体を含む)に関する注意喚起

と説明されています。

しかも、食べ物に関する食物抗原特異的IgG抗体検査は保険が適用されず、自費です。

時々「血液検査をしたらたくさんの項目が陽性になった。全部食べられない」という方の話を聞きますが、こうした例はIgG抗体検査を受けている大人が多いです。

「血液検査だけで食物アレルギーとは確定診断できない」に加え、「血液検査が食物アレルギーの診断に役立つのはIgE抗体検査であり、IgG抗体検査はアレルギー学会によって公式に否定されている」ことを知っておきましょう。

参考:日本アレルギー学会|血中食物抗原特異的 IgG 抗体検査(IgG4 などのサブクラス抗体を含む)に関する注意喚起

食べられるのに食べない「不必要な除去」でかえって食物アレルギーを起こすことも

15年ほど前、息子が食物アレルギーと診断されたときは「血液検査で陽性だったら該当する食べ物を除去する」のが一般的でした。

しかし、2023年現在では、症状を起こす食べ物以外の”不必要な除去”はかえって悪影響だとされています。

「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」では、正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去を治療の原則としています。

必要最小限の除去とは「食べると症状が誘発される食物だけを除去する」「原因食物でも、症状が誘発されない“食べられる範囲”までは食べることができる」ことで、食べられる範囲は、食物経口負荷試験などで確認し、医師の指示に従うこととしています。

特に、すでに食べることができているものを制限する必要はありません。

血液検査で陽性だったからといって該当する食べ物を除去し続けると、元々食べられていたものが食べられなくなってしまい、かえって食物アレルギーの症状を起こす例も報告されています。

一方で、症状を起こす食べ物を除去することは、安全に過ごすために必要不可欠です。

症状が出る可能性があるのに自己判断で除去の範囲を決めたり、医師の診察を受けずに食べたりすることは、危険なのでしてはいけません。

参考:
Yahooニュース|「IgGが陽性だから除去食」で悲劇も 食物アレルギー検査にIgG抗体を用いない理由
食物アレルギー研究会|食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022 食物アレルギーの診断・管理・治療

子どものアレルギー検査、どんなときに調べる?

卵や牛乳など食材の写真

子どものアレルギー検査のタイミングと、検査を受ける医療機関の選び方を紹介します。

症状があるとき

特定の食べ物を食べたときに、蕁麻疹、咳、腹痛といったアレルギーの症状が出るときは、食物アレルギーの検査をおこなうタイミングです。

乳児期では、顔や全身にひどい湿疹があって治りにくいケースで食物アレルギーが疑われるケースがあります。

生の果物や野菜を食べ、口腔に違和感や痒みがあるケース、食後に運動したときに重いアレルギー症状が出るケースなども食物アレルギーの可能性があります。

何の食べ物を食べて症状が出たかはっきりしないケースも多いため、上記のような気になる症状があれば医療機関を受診すると良いでしょう。

ちなみにわが子の場合、乳児期の湿疹がひどく、皮膚科からアレルギー専門の小児科を紹介されて最初の検査を受けました。

アレルギーの検査自体に年齢制限はありません。

食物アレルギーがあるのではないかと不安なときは

「家族に食物アレルギーがあるので、子どもにも食物アレルギーがあるのではないかと心配」というケースもあるでしょう。

食物アレルギーを疑うような症状が出ていない場合は「初めて食べるものは少量ずつ食べる」「病院が開いている時間帯に食べる」といった工夫を。

心配なときは、アレルギー専門医のいる病院にかかったり、電話相談をしたりする方法があります。

参考:国立病院機構相模原病院|アレルギー医療電話相談

ちなみに、食物アレルギーが心配だからという理由で離乳食の開始を遅らせることは推奨されていません。

湿疹がある子どもは食物アレルギーの発症リスクが高いとされていますが、この場合も、自己判断するのではなく、病院で皮膚症状の改善をおこない、離乳食の進め方を相談するようにしましょう。

参考:アレルギーポータル|食物アレルギーにならないために、離乳食を開始するのを遅らせるほうがよいでしょうか。

どこでアレルギー検査をする?

食物アレルギーの血液検査は多くの医療機関でおこなわれていますが、食物経口負荷試験は限られた病院でしかおこなわれていません。

また、「アレルギー科」を標榜しているからといって、食物アレルギーに強い医院とも限りません。

残念ながら、食物抗原特異的IgG抗体検査を食物アレルギーの検査としておこなっていたり、血液検査だけで除去を指導したりする医療機関も多くあります。

どの病院で受ければ良いかわからないときは、各都道府県にあるアレルギー疾患拠点病院やアレルギー専門医のいる病院、経口負荷試験を実施している医療機関を調べてみると良いでしょう。

以下のホームページから検索できます。

参考:
アレルギーポータル|医療機関情報 都道府県アレルギー疾患医療拠点病院
日本アレルギー学会|日本アレルギー学会専門医・指導医一覧(一般用)
食物アレルギー研究会:食物経口負荷試験 実施施設一覧

アレルギー専門医とは、診察しているアレルギー患者数、アレルギー学の学会・論文発表といった基準を満たし、筆記試験に合格した医師を日本アレルギー学会が認定するものです。

参考:日本アレルギー学会|専門医ってなあに?

アレルギー検査は専門医に相談しておこなおう

「食べて症状が出る食べ物は除去をする」という方針は今も昔も変わりません。

しかし、「血液検査で陽性だったら除去をする」という時代は終わり、2023年現在では「食物経口負荷試験で症状が出る量を把握したあと、医師の診断のもとで不必要な除去は避け、食べられる範囲までは食べる」という方針に変わっています。

食物アレルギーは、時として命にかかわるため、意味のない検査や自己判断をもとに治療方針を決めることはとても危険です。

アレルギーを疑う症状が出てアレルギー検査をしたい場合は、アレルギー専門医にかかると良いでしょう。

アレルギー専門医と、勤務する病院名は日本アレルギー学会のホームページから検索できます。

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