【FP監修】出産費用は医療費控除の対象になる?返ってくる額や対象の項目とは

医療費控除の明細書と電卓

出産費用は高額なため、医療費控除で少しでも負担を減らせないかと考える方も多いでしょう。

病院へ支払う入院費が出産一時金だけでは足りないケースも多いですし、その他にも出産には多くのお金がかかりますから、医療費控除で節税するのは有効な対策です。

この記事では、出産費用が医療費控除の対象になるのかどうか、そして出産費用のうち医療費控除を受けられるものと受けられないもの、医療費控除でいくら戻ってくるのか、医療費控除の申請方法などを解説します。

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監修者プロフィール

今井 園美アイコン
今井 園美

子どもたちの教育資金に苦労した経験から2010年に2級FP技能士を取得。
得意分野は「住宅ローン」と「家計の見直し」。現在は家づくり学校にて、FP資格を生かした家づくりアドバイザーとしてお客様の住まいづくりをサポートしています。
ムダを省き、整理することが大好きなシンプルリストです。
家づくり学校HP:https://school.stephouse.jp/

出産費用は医療費控除の対象になる

大前提として、出産費用は医療費控除の対象です。

しかし、同じ出産関連費用と思えるものでも、控除の対象となる出費とそうではない出費とがあります。

それぞれを詳しく解説しましょう。

医療費控除が受けられる条件

まず、出産費用に限らず医療費控除全体について、少し説明します。

医療費控除が受けられる条件があるので、以下をご確認ください。

  • 自分や生計を同一にする家族や親族のために支払ったものであること
  • その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること
  • 医療費が10万円以上、または総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%を超える場合
  • ただし、生命保険の給付金や出産育児一時金を差し引く
  • 限度額は200万円

会社の年末調整では手続きができないので、別途確定申告をする必要がある点に気をつけましょう。

※出典:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

医療費控除の【対象になる】妊娠・出産費用

入院中に避けられない出費なら、医療費控除の対象だと考えるのが一つの基準です。

以下の例をご確認ください。

  • 妊娠と診断されてからの定期検診や検査費用
  • 分娩費用
  • 通院・入院時の交通費(公共交通機関のみ)
  • 入院時、緊急時のタクシー代(公共交通機関が使えないときのみ)
  • 入院中の食事代(病院で出された食事のみ)
  • 産後1ヵ月検診代

バスや電車など、交通費の領収書がない場合は、日付や区間など詳細をメモしておきましょう。

公共交通機関が利用できない深夜などに出産のために病院へ行く際は、タクシー利用料も控除の対象です。

医療費控除の【対象にならない】妊娠・出産費用

対象になる場合と反対に、「しなくても良い」「買わなくても良い」もの・ことに対する出費ならば、医療費控除の対象にならないと考えられます。

  • 里帰り出産のための新幹線などの交通費
  • 公共交通機関が使える状況で利用したタクシー代
  • 自家用車で通院した場合のガソリン代
  • 入院のために購入した身の回り品(パジャマ、洗面用具等)
  • 病院外から調達した食事代(出前、外食等)
  • 差額ベッド代(自ら希望した場合)
  • 医師や看護師等へのお礼にかかった費用
  • 出生前診断費

控除の対象となるタクシー代もあれば、ならないタクシー代もあるので注意が必要です。

母体の血液を使って胎児の染色体における数的異常を調べる出生前診断も、診断の結果が治療につながるものではないと考えられており、医療費控除の対象とはなりません(令和4年8月1日現在)。

※出典:No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例|国税庁

出産費用は医療費控除でいくら返ってくる?

お金と電卓

では、出産費用を医療費控除申請した場合、どのぐらい還付金があるのでしょうか。

続けて、具体的に解説します。

医療費控除額と還付金額の計算方法

医療費控除額と還付金の額は、下記の方法で計算できます。

医療費控除額=1年間の医療費の合計額-保険金等で補填された金額-10万円(※または所得の5%)

※総所得金額が200万円未満の場合は、総所得の5%
※1年間の医療費の合計額は、生計を同じくする家族全員分を合算できます

還付金額=医療費控除額×所得税率

課税される所得金額に対する所得税率は以下のとおりです。

課税される所得金額税率
1,000円 から 1,949,000円まで5%
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%
40,000,000円 以上45%

※出典:
No.2260 所得税の税率|国税庁
No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

モデルケースで還付金額を計算

それでは、実際に例を挙げて医療費控除によってどのぐらいの還付金が得られるかを計算してみましょう。

  • 医療費控除の対象となる医療費の合計:65万円
  • 出産育児一時金:42万円
  • 医療保険の入院給付金:10万円
  • 課税所得:350万円

上記の金額を、先にご紹介した計算式に当てはめてみましょう。

税率も、該当箇所を参照します。

医療費控除額=65万円-(42万円+10万円)-10万円=3万円
還付金額=3万円×20%=6,000円

出産育児一時金と医療保険の入院給付金は、「保険金等で補填された金額」にあたるので、医療費合計から差し引きます。

課税所得が350万円なら所得税率は20%となり、医療費控除額である3万円に20%をかけた金額の6,000円が還付される計算です。

医療費控除の申請方法

申請のブロック

医療費控除は確定申告で申請しますが、給与所得のみの会社員の場合はあまり縁がなく、方法がわからないかもしれませんね。

そのような方は、以下の申請方法を参考にしてみてください。

1.必要な書類を集める

医療費控除を申請するには、まずは下記の必要書類を集めましょう。

  1. 確定申告書
  2. 医療費控除の明細書【内訳書】
  3. 医療費の領収書等
  4. 源泉徴収票
  5. マイナンバーカード(マイナンバーカードを持っていない場合、マイナンバーのわかるもの+本人確認書類)
  6. 還付金の振込先口座番号がわかるもの

1.確定申告書と2.医療費控除の明細書は税務署でもらうか、国税庁の「確定申告書作成コーナー」からダウンロードできます。

3.医療費の領収書と4.源泉徴収票は申請する際に参照する必要がありますが、原本を提出する必要はありません。

2.確定申告書と医療費控除の明細書を記入する

源泉徴収票と領収書等を見ながら、確定申告書と医療費控除の明細書を記入してください。

令和4年分以降なら、1~12月までの情報をマイナポータルと連携させて確定申告書に自動入力させることもできますので、必要な方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

子どものマイナンバーカードを取得している場合は、必要な手続きをすれば子どもの分も自動入力が可能なため、かなり手間を省けて便利です。

※参考:マイナポータルと連携した所得税確定申告手続|国税庁

医療保険者から交付された医療費通知(医療費のお知らせ)がある場合は、通知を添付することによって明細書の記載を簡略化することができます。

忘れてはいけないのは、確定申告書に還付金の振込先を記載すること。

そして、確定申告できる期間も決まっていますので、気を付けてください。

税務署の窓口で確定申告を受け付ける期間は、原則、令和5年2月16日~3月15日となります。

ただし、医療費控除のように、払いすぎた税金が戻る「還付申告」については、対象となる医療費がある年の翌年1月1日から5年以内に行えば問題ありません。

2022年分の医療費控除の場合は、2023年1月から2027年の12月末日までとなります。

なお、次に説明しますが、提出方法によって紙の書類で作成するかデータで作成するかが異なります。

提出方法を決めてから書類作成を始めましょう。

3.税務署に提出する

作成した確定申告書類は、以下の3つの方法で提出が可能です。

1.e-Tax(電子申告)でオンライン送信
パソコン、またはスマートフォンを使ってインターネット上の「国税庁 確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成します。マイナンバーカードの読み取りをおこなうため、パソコンで申請する際は、ICカードリーダーが必要です。
2.書類一式を税務署へ郵送
確定申告書は「信書」扱いとなるため、郵便または信書便での送付のみOKです。消印の日付が提出日となります。宅急便などは使えません。
3.税務署の窓口へ持参
所轄の税務署へ自分で持って行く方法もあります。時間外収集箱も設置されているので、役所の開所時間でなくとも自分の都合の良いタイミングで提出しに行ける点が便利です。

医療費控除の確定申告をするときのポイント

指をさす女性

控除対象となるかどうか以外にも、医療費控除の確定申告には知っておいたほうが良い点がいくつかありますので、ご紹介します。

年をまたぐ場合は2年に分けて計算する

確定申告医療費控除の申請では、1月1日~12月31日を1年間として対象となる医療費を計算します。

そのため、出産や入院で年をまたいだときは、2年に分けて申請しなければなりません。

11月に妊娠3ヵ月で初めて産婦人科を受診して翌年6月に出産した場合、11月と12月に支払った医療費は翌年に、年が明けて1月から6月までに支払った医療費はさらにその翌年に申請することとなります。

還付金は過去5年分をさかのぼって申請できる

先にお伝えしたとおり、対象となる医療費がある年の翌年に確定申告するのが原則ですが、期間を過ぎても5年間はさかのぼって申請が可能です。

特に、妊娠~出産の間は体調がすぐれなかったり、入院期間が長く準備ができなかったりするケースもあるでしょう。

そのような場合は、無理に期限に間に合わせようとがんばらなくても大丈夫です。

赤ちゃんやママの体調を優先にして、落ち着いてから前年、前前年の分を申告することもできますよ。

領収書は5年間保管する

医療費控除を申請する際、病院や薬局などの領収書を提出する必要はありません。

ただし、申告後5年間は領収書を保管しておく義務があります。

領収書をファイリングしておくと、あとから見返すときも計算するときもわかりやすいでしょう。

まとめ

出産費用は、医療費控除が可能です。

病院での妊婦検診費用や入院費用だけではなく、病院へ行く公共交通機関の交通費なども控除の対象となります。

医療費控除を申請すれば、所得税率に応じた還付金が得られます。

医療費控除を申請するには、インターネット経由または紙の書類で確定申告をしてください。

育児には労力もお金もかかります。

多少の手間はかかりますが、還付金を受け取って育児費用にプラスオンできると良いですね。

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