生後6ヵ月頃になると乳歯が生えはじめ、2~3歳になると上下合わせて20本の乳歯が生えそろいます。
徐々に生えそろっていく乳歯を見て、我が子の成長を感じるとともに、気になり始めるのが歯並びのことではないでしょうか。
そこで今回の記事では、乳歯の歯並びが気になった場合の対策や、どのようなことに気をつけたら良いのかをご紹介します。
自分自身の歯並びで苦労した経験のあるママは特に気になりますよね。
この記事を参考に子どもの歯並びをチェックしてみましょう。
監修者プロフィール
すぎやまデンタルクリニック院長 杉山真一
歯科医療に携わって20年、生まれ育った岡山の街や皆様を元気にすることを目標に、岡山市南区新保に歯科医院を開院。
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乳歯の歯並びが悪いとどのような影響があるの?
乳歯の歯並びが悪いことで起こる影響の代表的なものとして、むし歯や歯肉炎のリスクがあります。
これは、歯並びが悪いことで、磨き残しが多くなることが原因です。
口内環境が悪くなるため、乳歯だけでなく永久歯もむし歯や歯肉炎、歯周病になる可能性があるので注意が必要です。
永久歯は乳歯の位置に誘導され生えてくるため、顎の成長が不十分であるなどの理由で乳歯の位置が悪いと、永久歯の歯並びにも影響してしまいます。
さらに、乳歯が生える時期は咀嚼や発音を練習する期間でもあり、歯並びが悪いことで十分に練習ができず、咀嚼や発音に支障をきたす可能性も考えられます。
また、機能的な影響だけでなく、歯並びや口元へのコンプレックスから笑顔に自信がなくなるなど、精神的な影響がおよぶこともあるかもしれません。
歯医者さんに相談したほうが良い乳歯の歯並び
乳歯の歯並びが悪いと気になってしまいますが、歯医者さんに連れていくほど……?と悩む方もいますよね。
ここでは、どのような歯並びは相談したほうが良いのかご紹介します。
受け口
いわゆる受け口といわれる反対咬合は、下の歯が上の歯よりも前に出てくる状態のことです。
歯並びだけでなく上下の噛み合わせがずれている可能性もあり、その場合は咀嚼がうまくいかず顎や身体の成長やバランスに影響することもあります。
また、磨き残しが起こりやすく、特に奥歯にむし歯ができやすくなります。
骨格が原因の場合や噛み合わせがずれているのではなく、上下の前歯だけが前後反対になっている場合は生え変わりで自然に治ることもあります。
出っ歯
出っ歯といわれる上顎前突は、下の前歯より上の前歯が大きく前方に突出している状態です。
上顎前突になると、唇が閉じにくいため口呼吸になりやすく口がぽかんと空いていることも多いので、口内が乾燥しやすくなります。
そのため、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
逆に鼻が詰まり気味のお子さんは口呼吸の習慣が身についてしまうことで、出っ歯になることがあります。
また指しゃぶり、舌・爪・タオル・毛布・服などを噛む癖のあるお子さんは要注意です。
上顎前突は永久歯への生え変わりで自然に治る可能性は低いといわれています。
上下の前歯に隙間
上下の前歯が重ならず隙間がある状態の歯並びを、開咬(かいこう)、オープンバイトといいます。
奥歯を噛み合わせた状態で上下の前歯に隙間ができるタイプの歯並びです。
この歯並びでは、前歯が噛み合っていないため食べ物をうまく噛みきれない、発音に支障がでるなどの影響が起こります。
また、オープンバイトは顎関節症のリスクが高くなります。
指しゃぶり、舌・爪・タオル・毛布・服などを噛む癖のあるお子さんは要注意です。
歯列がガタガタ
ガタガタに歯が生えてくる状態を叢生(そうせい)といいます。
隣り合う歯が前後に重なっていたり、1本だけ飛び出ていたりする状態の歯並びで、乱ぐい歯ともいわれています。
歯磨きをしても歯がデコボコと重なり合っているため汚れを取りきるのが難しく、むし歯や歯周病のリスクが高い歯並びです。
様子を見て大丈夫な乳歯の歯並び
一見心配な歯並びに見えても、様子を見て大丈夫な場合もあります。
どのような歯並びなら様子見で良いのかをご紹介します。
すきっ歯
永久歯では悪い歯並びとして認識されているすきっ歯ですが、乳歯では悪い歯並びとは考えられておらず、むしろ永久歯が生えるためには良い状態です。
永久歯は乳歯よりも1.5~2倍くらい大きいため、乳歯が生えそろったとき隙間がないとスペースが足りずに永久歯が入らない場合があります。
また、乳歯が生えそろったあとも顎は成長するため、きれいに揃っていた乳歯が徐々にすきっ歯になることもあります。
永久歯への生えかわりの準備と捉えて様子を見ましょう。
斜め・八の字に生えてきた
歯が斜めや八の字に生えてくると心配になりますが、実は乳歯ではよくあることで、それほど心配のいらない生え方です。
顎の骨や唇、頬、舌の筋肉がしっかり発達することで、自然と正しい向きになっていくことが多く、通常は治療の必要はありませんが、歯科で経過観察をしてもらいましょう。
乳歯の歯並びを悪くさせない・悪化させないための対策
子どもの歯並びは遺伝によるところもありますが、悪習慣などによって悪くなることもあります。
遺伝以外の部分でできる対策をいくつかご紹介します。
口呼吸をしない
口呼吸をすることで、舌の位置が下顎に落ちて歯を押し出すため、歯並びの悪さにつながってしまいます。
また、口まわりの筋肉が発達せず、顎の成長にも悪影響です。
顎の形は乳歯の歯並びへの影響が大きく、さまざまな歯列不正の要因にもつながります。
子どもは肺活量が少なく、呼吸が浅く早くなりがちです。
そのため鼻呼吸では息苦しく感じるため、口呼吸になりやすいのです。
大きく、深く呼吸するよう、口呼吸になっている様子が見られたら一緒に鼻で深呼吸する練習をしてみてください。
また口呼吸はただの癖ではなく、慢性鼻炎などによる鼻づまりなどが原因になっている可能性もあります。
そのため、口呼吸になっている原因を見つけることも必要です。
指しゃぶりをしない
指しゃぶりは開咬や出っ歯になるリスクがあります。
指しゃぶりによって吸う力が加わるため、上顎の歯列が狭くなり、前歯が前に押し出されることから開咬や出っ歯などの歯列不正につながります。
3歳を過ぎたあたりからやめるように促しましょう。
指しゃぶりが4歳になってもやめられないなど長く続くようなら、歯科や小児科への相談が必要です。
指しゃぶりについては下記記事に詳しく書かれているのでぜひ参考にしてください。
姿勢を正す
一見関係ないように感じる姿勢も、乳歯の歯並びに影響する場合があります。
例えば、猫背はかかとに重心がかかり、下顎が後ろに引っ張られるため、乳歯が上顎前突になるリスクが高くなります。
勉強中や読書中などの集中しているときほど背中が丸まりがちなので注意しましょう。
また食事を摂るときは、お子さんの足の裏が床や足置きにしっかりとついていることが大切です。
足がプラプラした状態ではしっかりと噛むことができず、お口の筋肉や顎の発達が未熟になりやすいです。
食事の時は足をしっかり踏ん張れるような高さのイスに座るようにしましょう。
食卓が高い場合は、足置きの高さが調節できるイスに座らせ、足の裏全体がつくように成長に合わせて足置きの高さを調節してください。
他にも、頬杖をつく癖がある場合は注意が必要です。
頬杖をつくことで、片方にだけ力がかかり、左右非対称の歯並びになる可能性があります。
また頭を支える首回りの筋肉の発育を妨げ、猫背の原因にもなります。
いずれにしても咬み合わせに影響がでるので、早めに治したほうが良い癖です。
よく噛んで食べる
乳歯の歯並びが悪くなる原因の一つに、顎の発達が十分でないことが考えられます。
食べ物をよく噛んで食べると、顎の発達につながり良い歯並びになるための土台が作られます。
簡単に飲み込めるやわらかいものばかりではなく、噛み応えのある食べ物を毎日の食事に取り入れるのもおすすめです。
また、ゆっくり食べる、飲み物で食べ物を流し込まないなども意識してみましょう。
離乳食が終わり飲み込みがしっかりしてきたら、お茶などの飲み物を食事と一緒に出すのはやめましょう。
食事中に水分を摂らなくても、良く噛んで唾液を分泌し、食塊を形成して飲み込む習慣を身につけるように意識して、お茶や水などの水分は食後に飲ませるようにしてください。
食べ物をよく噛むことは、顎の発達につながり良い歯並びのためにはおすすめですが、片方だけで噛むと左右で顎のバランスが崩れゆがみの原因になるので注意が必要です。
食事の際は、左右バランス良く噛んで食べるように声かけをしてあげてください。
唇・爪を噛む癖を直す
唇や爪を噛む癖は、上下の歯に強い力を与えることになり、出っ歯や受け口の原因となります。
唇や爪を噛んでしまう原因は様々ですが、ストレスを抱えていることが原因となることがあります。
その場合唇や爪を噛む癖をやめさせるには、まずはストレスケアから始める必要があるでしょう。
十分な睡眠時間を取れるようにしたり、バランスの良い食事を心がけたりすることも、ストレスケアにつながります。
また兄弟姉妹がいる場合、特定のお子さんを構い過ぎていたり、逆に構わなさすぎたりしていないかも気にしてみてください。
爪噛みについては下記の記事で詳しくご紹介しているので参考にしてください。
まとめ
今回の記事では、乳歯の歯並びが気になった場合の対策や気をつけることなどをご紹介しました。
乳歯が生えてくるとむし歯などのトラブル以外にも歯並びが気になってきますよね。
歯列不正には遺伝も関わってきますが、日常生活のなかでの癖が影響する場合もあります。
特に顎の発達に影響が出る癖は、なるべく直せるように配慮しましょう。
また、歯並びのことで気になることがあったら、ぜひ歯医者さんに相談してください。
定期的に歯医者さんに通うことで、歯並び以外にもお口の健康チェックもできます。