「秋雨前線」と聞くことがあっても、具体的にどのようなものかわからない方もいるでしょう。
そこで今回の記事では、秋雨前線がどのようなものなのか、その仕組みや時期などをご紹介します。
「秋雨前線」という言葉がテレビなどから聞かれたとき、梅雨との違いや秋雨前線以外の前線の種類、台風との関係などを子どもにも説明できると良いですよね!
また、秋雨前線以外の秋に降る雨の名前もご紹介するので、子どもと季節の話題を楽しむための参考にしてください。
秋雨前線とは?
「秋雨前線」という言葉はよく聞きますが、具体的にどのようなものなのでしょうか。
ここでは、秋雨前線の仕組みなどをご紹介します。
秋雨前線の仕組み
そもそも前線とは、暖かい空気や冷たい空気など、性質の異なる空気の境目のことです。
この空気の境目では上昇気流が起こり雲が発生します。
そのため、東西にできた長い前線の近くでは曇りや雨などのぐずついた天候となります。
「秋雨前線」は秋の空気と夏の空気の境目のことです。
気温や湿度が同じくらいの巨大な空気の塊である「気団」のうち、夏に勢力を増す小笠原気団が弱まると北側にオホーツク気団が現れ南下してきます。
この2つの気団がぶつかることで秋雨前線は発達します。
秋雨の時期
秋雨は「あきさめ」や「しゅうう」と読み、9~10月上旬に降る雨のことです。
夏の終わり頃から発達する秋雨前線の影響で、秋雨は長期間にわたって降り続く場合も多いため「秋の長雨」と呼ばれることもあります。
残暑から秋へと季節の移り変わりを知らせてくれるものである一方、台風や土砂崩れなどの被害が起こりやすい時期でもあるため、注意しなければなりません。
また、秋雨は西日本よりも東日本で多く降る傾向があるのも特徴です。
梅雨前線との違い
「秋雨前線」と似ているものに「梅雨前線」があります。
どのような違いがあるのかいまいち良くわからない方もいますよね。
まず、この2つの前線で大きく違う部分は、季節が違うことです。
梅雨前線と秋雨前線は、いずれも停滞前線ですが、具体的には以下のような違いがあります。
梅雨前線 | 南からの夏の空気が北の春の空気に向かって北上した境目 | 5~8月にかけてできる | 西日本の雨量が多くなる傾向 |
---|---|---|---|
秋雨前線 | 北からの秋の空気が南の夏の空気に向かって南下した境目 | 8~10月にかけてできる | 東日本の雨量が多くなる傾向 |
前線の種類
「○○前線」という言葉をよく聞きますが、その性質から4つの種類の前線があります。
秋雨前線や梅雨前線とともに、その他の前線の特徴もチェックしてみましょう。
温暖前線
温暖前線は、寒気団側へ移動する前線のことで、冷たい気団よりも暖かい気団の勢いが強いときにできます。
冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げるようにして進み、この温暖前線が近づくと、気温と湿度が徐々に高くなり、気圧は急速に下がります。
温暖前線通過後は気圧はほぼ一定になり、断続的に気温と湿度が上昇します。
穏やかな雨が長時間降り、急激な天候の変化は少ないのが特徴です。
寒冷前線
寒冷前線は、暖気団側へ移動する前線のことで、暖かい気団よりも冷たい気団の勢いが強いときにできます。
冷たい空気のほうが暖かい空気よりも重いため、暖かい空気の下に冷たい空気が潜り込むようにして進みます。
寒冷前線が生まれることで暖かい空気が上空へ一気に押し上げられるため、積乱雲が発生し強い雨が短時間で降るのが特徴です。
また、激しい雷や雹、突風をともなう場合もあります。
前線の通過後は、気温と湿度が急激に下がります。
閉塞前線
閉塞前線は、寒冷前線の移動が早くなり温暖前線に追いついた前線のことです。
追いついた寒冷前線の後ろの寒気によって寒冷型と温暖型に分かれ、温度が低ければ寒冷型閉塞前線、高ければ温暖型閉塞前線となります。
日本付近など、大陸の東側で起こりやすいのは寒冷型、ヨーロッパなど大陸の西側で起こりやすいのは温暖型です。
停滞前線
停滞前線は、暖気と寒気の勢力が同じくらいで、ほぼ同じ位置にとどまっているように見える、動きの遅い前線です。
停滞前線は特定の季節に見られる特徴的な前線ではなく、どの季節にも現れます。
特に梅雨季前半の梅雨前線は停滞しやすい特徴があります。
秋雨前線と台風の関係
秋雨前線が発達する8~10月は、台風が発生・上陸する時期と重なります。
前線と台風の位置に距離があっても、台風の湿った気流が風によって運ばれ、秋雨前線が刺激されて大雨となる場合があります。
秋雨前線は停滞前線で同じ場所にとどまりやすい性質があるため、台風の刺激などによって活発になると、同じ場所で長時間大雨を降らすことも考えられます。
そのため、河川の増水や氾濫、土砂災害などが発生する恐れがあり、秋雨前線が発達しているときに発生する台風には注意が必要です。
下記の記事では台風の仕組みを詳しくご紹介しているので参考にしてください。
▼【台風とは】仕組みは?いつくるの?子ども向けにわかりやすく説明してみよう
秋に降る雨の名前
秋に降る雨や現象にはいくつか名前がついています。
一般的ではないものもありますが、俳句の季語や時候の挨拶に使われるものもあるため、どのようなものがあるのかチェックしてみましょう。
秋出水(あきでみず)
秋出水は、お盆を過ぎた頃の集中豪雨や台風によって河川の水があふれ出し洪水になることをいいます。
秋出水が一般的に使用されることは少ないのですが、洪水や河川の氾濫を表す季語として俳句のなかで使用されます。
秋霖(しゅうりん)
秋霖は、秋のはじめの頃に降り続く長雨のことです。
霖には「3日以上降り続く雨」との意味があり、秋霖と秋雨は同じ意味で使われることも多くあります。
霖が常用漢字表外であることから、「秋雨」や「秋の長雨」と書き換えられる場合もあります。
秋霖は時候の挨拶としても用いられることがあり、秋雨前線が通過する時期の手紙で使用可能です。
伊勢清めの雨(いせきよめのあめ)
伊勢清めの雨は、旧暦の9月17日におこなわれる宮中行事である神嘗祭の翌日に降る雨のことで、祭祀のあとを清めるといわれています。
神嘗祭は現在毎年10月17日に伊勢神宮でおこなわれる新穀を天照大御神に奉納する神事です。
伊勢神宮に限らず、神社で小雨が降ると神様が歓迎してくれていると考えられており、縁起が良いといわれています。
秋湿り(あきじめり)
秋湿りは、秋に降る長雨を指す言葉の一つで、長く雨が降ることであちこちが湿りがちになることをいいます。
一般的に使用されることはあまりありませんが、季節を表す季語として俳句に使用されることが多くあります。
まとめ
この記事では秋雨前線がどのようなものなのか、仕組みや時期、梅雨前線との違いなどをご紹介しました。
秋雨前線が発達する時期は台風の発生時期とも重なっており、大雨になったり長雨になったりすることが多くあります。
気温が下がり涼しくなる合図である一方、河川の氾濫や土砂崩れなどの災害にも注意しなくてはならない時期になるので、安全に過ごせる方法を考えたいですね。
また、秋の雨には情緒ある名前がついていることもあるので、子どもと一緒に季節にまつわる言葉を楽しむきっかけにしても良いのではないでしょうか。