いつ起こるかわからない自然災害に対し、備えの意識が強まる昨今。
でも忙しい日々のなか、熱心に防災に取り組む余裕はない、というのも多くの人の本音ではないでしょうか。
辰巳出版より刊行された『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』では、新たなライフスタイルが提案されています。
防災士やキャンプインストラクターの資格をもつママキャンパー「CAMMOC(キャンモック)」のメンバーであるマミさん、カナさん、アヤさん、3家族の暮らしを惜しみなく大公開。
〝いつも〟の日常時と〝もしも〟の非常時のフェーズを分けない「フェーズフリー」の考え方のもと、理想の暮らしと防災の両立を叶えています。
今回は特別に、本書の内容を一部編集して全2回の連載としてお送りします。
第2回は日々の暮らしから見えてくる防災について。
家族みんなで〝もしも〟を考える
災害に備えて、日ごろから家族で意識できることは何でしょうか?
ママキャンパー「CAMMOC(キャンモック)」のメンバーが日頃から意識していることを3つご紹介します。
「災害時、自分がどこにいるか、誰かと一緒かどうかは予測できません。家族がバラバラの場所で被災することも十分に考えられます。
一人ひとりが自分自身の命を守ることを意識したうえで、みんなの命が助かる方法を考えておかなければなりません。
家族であっても年齢や体質、性格によって災害時の課題は異なります。
考え方を共有し、被災したらどうするか、一緒に家にいても違う部屋にいたらどうするかなど、ルールを決めておくといいでしょう。
私たちは日頃から意識していることが3つあります。
1つはコミュニケーションをとること。「おはよう」の挨拶や「ありがとう」「ごめんね」はもちろん、何気ない会話も。伝言板やメモで伝えることもあります。手を握ったり抱きしめたり、スキンシップも欠かせません。遠方にいる家族ともメールや電話、SNS、写真共有アプリなどで近状を知らせています。
2つめは、家族写真を持ち歩くこと。とびきり笑顔の集合写真やペットのベストショットなど、見返した時に元気になれる写真を防災ポーチやマザーズバッグに入れています。裏には家族の連絡先や避難所などをメモ。万が一に備えたお守りです。
3つめは、旅行やキャンプに行くこと。バックパックを背負って電車や飛行機で旅したり、知らない土地に行ったり、日常生活ではできない体験すべてが、自身や子供たちの生きる力を育むものだと思っています。
私たちの防災は日々の生活のなかにあるので、一緒に暮らす家族も防災を特別なものだとは感じていないようです。
子供にも教えるというよりは〝伝える〟、そして〝一緒に考える〟ことを大切にしています。
離れて暮らす家族がいたり、もはや家族のようなルームメイトがいたりと、人それぞれの暮らしがあると思います。
その暮らしがこの先も当たり前に続くよう〝もしも〟を考えてみてください。
一人で留守番やお出かけができるようになったら、親がそばにいない状況を想定して子供用の防災バッグも用意しましょう。」
ペットのためにできる限りのことを
ペットも大切な家族の一員。
災害時に限らず、自分に万が一のことが起こった際にどうすれば良いか事前に考えておきましょう。
「動物は十分にしつけていても非常時には疾走する可能性があり、離れている時に被災することもあるため、ペットを飼っている方は「ペットの防災」も考えておかなければなりません。
犬と猫に関してはマイクロチップの装着が義務化されていますが、読み取り装置がなければ情報は得られません。迷子になった時を考えて飼い主の連絡先を首輪などに記しておくと安心です。
飼い主もペットの情報を伝えられるよう、写真を持ち歩くことをおすすめします。
避難が必要になった時のことも、事前に考えておかなければなりませんよね。ペット同伴可能な避難場所、避難経路はあらかじめ情報を集めておき、避難先で周囲に迷惑がかからないよう日頃の健康管理やしつけも大切です。水やペットフードなどの備蓄も忘れずに。
「自分がいなくなったらこの子はどうなるか」を考えておくことも大切。
災害時に限らず、急な病気などでお世話ができなくなる可能性もあります。健康手帳などを用意し、予防接種や治療の記録、飼い主しか把握していないことをまとめておきましょう。普段から頼れる人に情報共有しておくと安心です。」
いつだって頼りになる家族の相棒
自家用車の必要性は、ライフスタイルによって人それぞれです。
自家用車を持っている方は、車内の備えについて確認しましょう。
「車は、生活に欠かせない人や趣味として楽しむ人がいる一方で、必要ない人もいるものです。
私たちはというと、マミとカナは車を持っていて、アヤは必要時にカーシェアリングを活用するスタイル。カーシェアリングは、目的に合わせて車種を選択できて便利です。
車があると日々の買い物や子供の送り迎え、仕事やお出かけの移動に大助かりですが、運転中や外出先での〝もしも〟を考えるのは案外見落としがち。車内にも、備えがあると安心です。
カナの車にはソーラー充電式ライト、サバイバルブレスレット、マルチツールナイフ、折りたたみ傘、携帯トイレ、ウェットティッシュ、パラコード、救急セットなどを常備しています。
マミの車には、運転席に緊急脱出用のレスキューハンマーとシートベルトカッターを常備。それから、小銭が入ったコインケースも。最近はスマホ決済ができる場面も増えていますが、大きなお札やカードが使えないコインパーキングの支払いや自動販売機など、何度も助けられました。」
まとめ
防災に正解はありません。
「いつ何が起こるかわからないから」の前に、「暮らし方は人それぞれだから」です。居住地域、住まい、家族構成、職業、生活習慣、食事のスタイル、インテリアの好みなど、まったく同じ人は一人もいません。だから、自分にとってよりよい方法を考えていくしかないのです。
たとえば写真にある、本の収納。これはアヤさんが使わなくなったキャンプカートを有効活用するために、思いついたものです。掃除がラクになり、子供が自分で選んで取り出しやすく、片付けることもできます。
そして結果的に、地震が起きた際、本棚に立てて収納するよりも飛び出しや落下の危険性を下げることができています。
まずは自分の暮らしの〝いつも〟をよくする。そこに防災意識が備わっていれば、〝もしも〟にも強くなっていきます。自分に合う防災は、日々の暮らしから見えてくるのです。
『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』には、本連載では紹介できなかった暮らしや防災のアイデアやヒントが、写真とともにたっぷり収録されています。