いつ起こるかわからない自然災害に対し、備えの意識が強まる昨今。
でも忙しい日々のなか、熱心に防災に取り組む余裕はない、というのも多くの人の本音ではないでしょうか。
辰巳出版より刊行された『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』では、新たなライフスタイルが提案されています。
防災士やキャンプインストラクターの資格をもつママキャンパー「CAMMOC(キャンモック)」のメンバーであるマミさん、カナさん、アヤさん、3家族の暮らしを惜しみなく大公開。
〝いつも〟の日常時と〝もしも〟の非常時のフェーズを分けない「フェーズフリー」の考え方のもと、理想の暮らしと防災の両立を叶えています。
今回は特別に、本書の内容を一部編集して全2回の連載としてお送りします。
第1回は、防災に強い家について。
見た目重視で叶えたスマートな玄関(マミのおうち)
玄関は、避難時に重要な経路となる場所の一つ。
まずはママキャンパー「CAMMOC(キャンモック)」のメンバーであるマミさんのご自宅の玄関での工夫について見ていきましょう。
「築35年、実家の一軒家をセルフリノベーション。新耐震基準をクリアした鉄筋コンクリートの丈夫な家です。
扉付き戸棚がいくつもありましたが、扉の開閉が手間で片付けが面倒に感じたため戸棚を撤去。自分が使いやすいオープンラックをDIYで設置しました。
防災を意識し始めると、扉がある収納は防災対策に向いていると気づきましたが、散らかっては意味がないと思い、自分に合った方法を続けています。オープンラックの高いところには重たいものは置かない、割れやすいものは手放すなど工夫するうちに、子供も暮らしやすい家になりました。
玄関にも以前は扉付きの靴箱がありましたが、ここでも出しっぱなしになってしまうのでオープンラックを設置。壁には有孔ボードも。靴は、見せたい好きなものだけを残して断捨離しました。
いつもすっきり片付いた玄関になり、避難時もスムーズです。
靴の収納は棚に取り出しやすさも叶えた落下防止のフック付きゴムを設置し、有孔ボードには工具箱や懐中電灯、外出時の持ち物をハンギング。」
家具は先のことを考えて選びたい
災害時のための備蓄品は、必要な時にサッと取り出せるように収納することが大切です。
収納力も、インテリア性も叶える家具についてご紹介します。
「部屋の雰囲気の好みは人それぞれですが、「ごちゃごちゃした部屋」と「整理整頓された部屋」では、後者のほうが掃除がラクで物の位置も把握しやすそうですよね。整理整頓されていると、非常時に避難する時も安全で、必要なものをサッと準備することができます。
ここで注意したいのは、「ごちゃごちゃした部屋」は物の多さのことを言っているのではないということ。散らかっているのと、物は多いけど片付いているのとでは、話がまるで変わってきます。
私たちは理想のインテリアデザインをキープしながら、防災のことも考えておきたいわけですが、だからと言って、毎日の片付けや掃除をタスクにしたり、物を増やさないよう我慢したりすると、ストレスに……。
それならば、と私たちがたどり着いた家具選びについてご紹介します。
荷物の多さをカバーできる収納付き家具は本当に便利。アヤの家のソファとベッドは、大容量の収納スペースを備えています。
ソファには日用品のストックや延長コード、救急セットなど、目に触れないところに収納しておきたいけれど、意外と取り出す機会の多いものを入れています。災害時用のトイレもこちらに。
ベッドには、取り出し頻度の少ない来客用布団や季節飾りのアイテムを収納。スペースを有効活用でき、地震が起きた際に物が散乱する心配もありません。
マミとカナの家では、子供の成長などライフステージの変化や使用シーンに対応できる、拡張性のある家具を採用。
たとえばテーブル。穴を開けることなく、ネジで簡単に装着できる脚を使っています。
長い脚だとダイニングテーブル、短い脚だとリビングテーブルになり、天板を取り換えることもできます。」
見せる収納の工夫
ディスプレイとしても楽しめる「見せる収納」ですが、地震の際は落下や飛び出しが心配ですよね。
どのような工夫が必要なのでしょうか。
「使用頻度の多い物は、扉や引き出しのなかに収納すると何かと不便。
「出しっぱなし」ではなく、きちんと置き場所を決めればインテリアの一部としてディスプレイを楽しめますよね。好きなアイテムを見えるところに飾っていると、気分が上がって心地よい空間になります。
見せる収納のメリットはまだまだあって、視認性が高く、何がどこに、どれだけあるかを把握することが簡単です。
家族間で物の位置を共有できるので、「アレ、どこにある?」と聞かれることも減り、片付けてくれるようにもなりました。
でも、地震が起きた時の落下や飛び出しは心配。落ちない・倒れない工夫をしたり、落ちても割れない安全なアイテムにしたり、日々の快適さを守りながらできる限りの工夫をしています。
棚自体に滑り止めシートや落下防止バーを取り付けることもできますが、アイテム自体に滑り止め加工をつけることもできます。
乾くと透明になる『スベラナイン』はインテリアの邪魔をしないので、カナのお気に入り。グラスは滑り止め加工をつけたカゴにまとめることで飛び出し・散乱防止に。普段もまとめて取り出せるので便利です。」
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まとめ
「防災に強い家」というのは、「地震に強い家」ではありません。
たとえば緊急避難が必要になった時の玄関は、地震の場合は物が散乱しないよう扉付きの靴箱がよいかもしれませんが、浸水や土砂崩れの危険性に備えて家を出るなら、扉を開閉することは手間になるはずです。
地球環境や気象状況は日々変化し、これからの災害は何が起こるかわかりません。
「災害」もいろいろですから、あらゆる視点から考える必要がありそうです。
また、自然災害はもちろんですが、たとえば子育て家庭にとっては子供のけがも災害の一つと言えます。
コーナーガードやドアロックを設置している方も多いでしょう。カナさんの家では、登山用の鈴を取っ手に巻きつけて開き扉のロックにしていました。
古材で作られたお気に入りの食器棚を傷つけることはなく、見た目もおしゃれ。子供が開けようとすると、音が鳴って知らせてくれます。
家具の配置や収納などを工夫した暮らしやすい家は、自分や家族の安全を守ることにつながるようです。
『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』には、本連載では紹介できなかった暮らしや防災のアイデアやヒントが、写真とともにたっぷり収録されています。