これから離婚の手続きを進める人、離婚してから2年以内の人。
年金分割の手続きをすることで、老後にもらえる年金額が増えるかもしれません。
この制度を知らずに手続きをしないと、もらえるはずの年金がもらえない、ということもあり得ます。
このコラムで自分がその対象になるか確かめてみてください。
監修者プロフィール

NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心と体の健康を支援する団体です。
子育ての責任を一手に担うシングルマザーが、自分の身体や心をケアする時間を持ち、地域を超えて交流することで、互いを励まし合えるような機会を提供しています。
※当団体の講座は寄付金や助成金で運営されているため受講料は無料です。
そもそも年金分割とは何か

年金分割とは、夫婦が離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金保険料納付の実績を分け合う制度のこと。
共働きで夫婦ともに職場の厚生年金や共済組合に加入していた場合だけでなく、妻が専業主婦で、夫が職場の厚生年金に加入していた場合もその対象になります。
分割の方法は「合意分割」と「3号分割」の二種類があります。
それぞれ、対象者や分割の割合が異なるため、ご自身のケースに合わせて分割の方法を選びましょう。
年金分割の対象となるケース
年金分割の制度は、夫婦のいずれか、あるいは両方が厚生年金に加入しているケースが対象になります。
残念ながら、自営業やフリーランスなど、いわゆる第一号保険者は、対象になりません。
ただし、今は自営業だが、婚姻期間中に数年でも厚生年金に加入していた時期がある、という場合は対象になります。
年金分割を行うメリット
公的年金は、保険料の納付実績に応じて、将来受け取れる金額が決まります。
例えば、婚姻期間中に、夫が会社員で妻が専業主婦であった場合、妻は保険料を負担していないため、婚姻期間中の納付実績がなく、離婚をすると将来の年金受取額が減ってしまいます。
離婚時に年金分割の手続きをおこない、夫の保険料納付実績を分割してもらうことで、専業主婦だった妻も、将来の年金受取額を増やすことができるのです。
共働きだった場合も、夫の方が収入が高かった場合、離婚時に年金分割をすることによって、将来受け取れる金額が増えます。
将来受け取れる金額が自動的に調整されるので、相手方とのやりとりが必要ないのもメリットです。
合意分割の請求手続き

「合意分割」は、当事者の合意で分割の割合を決めるもので、割合の上限は50%までとされています。
手続きには以下の4つのステップがあります。
1. 年金分割のための情報通知書を取得する
まずは、年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得します。
情報通知書は一人でも請求できます。
請求の際は、基礎年金番号あるいは個人番号(マイナンバー)を記入する必要がありますので用意していきましょう。
また、婚姻期間を明らかにすることができる書類として、それぞれの戸籍謄本(全部事項証明書)、または戸籍抄本(個人事項証明書)のいずれかの書類も必要です。
書類は、請求日から6カ月以内に交付されたもので、婚姻日および離婚日が確認できるものである必要があります。
2. 話し合いで分割の割合を決める
まずは当事者間で、厚生年金保険料の納付実績をどの割合で分けるか(按分割合といいます)を話し合います。
その場合、割合の上限は50%までとされています。
例えば、夫婦の婚姻期間中の標準報酬総額が分割前にはそれぞれ 夫:6000万円、 妻:4000万円であった場合、最大50%で分割する場合は、夫:5000万円、 妻:5000万円 となり、夫から妻に1000万円を割り当てることになります。
当事者間の合意があれば、夫:60%、妻:40%、夫:55%、妻:45%といった割合にしても問題ありません。
最大50%で分割というルールに元々の割合(年金分割を請求する側が元々受け取る予定だった年金受給額)を下回ってしまうような割合(夫:90%、妻:10%など)や、50%の範囲を超えるもの(夫:30%、妻:70%など)は認められません。
3. 合意書を作成する
年金分割の割合を明らかにし、当事者同士がこれに合意したことを証明する書類として、以下のいずれか1つを用意する必要があります。
- 公正証書の謄本または抄録謄本
- 公証人の認証を受けた私署証書
- 年金分割合意書(年金分割することおよび按分割合について合意している旨を記入し署名した書類)
※年金分割合意書は日本年金機構のサイトからダウンロードできます。
4.必要書類を年金事務所に提出する
「標準報酬改定請求書」に必要事項を記入し、以下の必要書類を添えて提出します。
※「標準報酬改定請求書」は年金事務所や年金機構のホームページからダウンロード可能
必要書類
- 請求者の「マイナンバーカード等」または「年金手帳」または「年金基金番号通知書」
- 婚姻期間を明らかにできる資料(「戸籍謄本」や「戸籍の全部事項証明書」など)
- 直近1ヵ月以内に作成された2人の生存を証明できる資料(「戸籍謄本」や「「戸籍の全部事項証明書」など)
- 年金分割を明らかにできる資料(分割割合に合意したことがわかる「公正証書」や裁判所から発行される審判書の「謄本」、年金分割合意書など)
3号分割の請求手続き
3号分割とは、第2号被保険者(※1)の厚生年金保険料の納付実績を、第3号被保険者(※2)(専業主婦など)である配偶者の請求により分割し、請求者の納付実績に加える制度です。
(※1)第2号被保険者:民間企業のサラリーマンや公務員、私立学校の教職員など
(※2)第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、年収が130万円未満の人
2008年(平成20年)4月1日以後に、一方に第3号被保険者期間があり、離婚した日の翌日から2年を経過していない人が対象になります。
分割の割合は50%ずつと決められていて、当事者で割合を決めることはできません。
双方の合意や裁判手続きは必要なく、3号分割を請求することを相手にいう必要もありません。
離婚をした後に、以下の2つのステップで請求します。
1.年金分割のための情報通知書を取得する
このステップは合意分割と同じです。
2.必要書類を年金事務所に提出する
「標準報酬改定請求書」に必要事項を記入し、以下の必要書類を添えて提出します。
2人で手続きをする必要がないのと、分割の割合が2分の1ずつと決められているので、手続きはシンプルです。
必要書類
- 請求者の「マイナンバーカード等」または「年金手帳」または「年金基金番号通知書」
- 婚姻期間を明らかにできる資料(「戸籍謄本」や「戸籍の全部事項証明書」など)
- 直近1ヵ月以内に作成された2人の生存を証明できる資料(「戸籍謄本」や「「戸籍の全部事項証明書」など)
年金分割に関するよくある疑問
年金分割について、よくある疑問について解説します。
離婚からいつまで請求できる?
年金分割の請求は「離婚が成立した日の翌日から起算して2年以内」という決まりがあり、その日を過ぎると、請求ができなくなってしまいます。
離婚時の調停や裁判中に、年金分割まで請求する余裕がなかったという人もいるかもしれません。
離婚から2年以内であれば手続きができますので、該当する場合はぜひ手続きをおこなってください。
また、現在調停中あるいは裁判中の方は、年金分割についても話し合って分割の割合を決め、合意書を作ることをお勧めします。
合意分割で話し合いがまとまらない場合は?
合意分割では、当事者同士の話し合いを経て、合意によって按分割合を決めるのが基本ですが、もし合意ができない場合や、話し合いができない場合は、家庭裁判所に対して審判あるいは調停の申し立てをすることができます。
年金分割をしない方がいい場合
年金分割は、厚生年金の受給額が高い人(年収が高い人)から、低い人へ分割されるという制度のため、元配偶者より自分の方が収入が多かった場合は、注意が必要です。
年金分割後に金額が変わることはある?
一度手続きをしたら、分割された年金は自分のものです。
元配偶者が亡くなっても、あるいはご自身が再婚をしたとしても、年金分割で得た年金額は変わりません。
まとめ
人生100年時代。
金融庁が2019年に「老後資金は2000万円必要」と公表したことが話題になっています。
子育て中のシングルマザーにとっては「老後資金よりも、目の前の教育資金の方が心配…」というのが本音かもしれません。
しかし、老後資金対策は少しでも早めにしておく方がいいのです。
年金分割の手続きをしっかりしておくことで、老後に受け取れる金額が少しでも増えるとわかっていれば、少し気持ちに余裕が出るのではないでしょうか?
このコラムで、自分がその対象になっているとわかった方は、必要な手続きにぜひ着手してくださいね。
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