賃貸人とは、賃貸物件を貸す方のことです。
一方、賃借人とは物件を借りる方のことで、物件を借りる代わりに賃料を支払っています。
賃貸人と賃借人にはともに遵守すべき義務があり、それぞれの義務を遵守することで、賃貸借契約が成立する仕組みです。
この記事では、賃貸人や賃借人の意味や義務、賃貸人の許可が必要な事柄、契約する際の注意点、賃貸人の仕事内容もご紹介します。
のちのトラブルを防ぐためにも、チェックしましょう。
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賃貸人と賃借人の違い
はじめに、賃貸人と賃借人は誰を指す言葉なのかをご紹介します。
賃貸人
賃貸人とは、持っている物件を貸し出す「貸し手」のことです。
持っている物件を貸すことで賃料をもらっています。
賃貸人以外に「貸主」「大家さん」「不動産管理会社」と呼ばれることもあります。
賃借人
賃借人とは、他人が持っている物件を借りる「借り手」のことです。
賃料を払う代わりに物件を借りています。
別の呼び名は「借主」「入居者」「契約者」です。
賃貸人の3つの義務
ここからは、賃貸人が背負う3つの義務をご紹介します。
使用収益をさせる義務
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
使用収益とは、物を活用して利益を得ることです。
つまり、賃貸人の「使用収益させる義務」とは、賃貸物件を賃貸借契約書の目的が達成できるように対処する義務のことです。
例えばマンション内で騒音問題が発生した場合、賃貸人は放置せずに問題解決できるように努めなければいけません。
マンションを居住地として利用できるように配慮する必要があるためです。
賃貸人はその対価として賃料を受け取っており、騒音問題が過度な状態であれば使用収益をさせる義務を守っていないと判断されます。
費用を償還する義務
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
賃貸人は、賃貸物件で賃借人が費用をかけた場合、その費用を負担する義務があります。
償還する義務のある費用は、必要費と有益費の2種類です。
必要費とは雨漏りや屋根の修繕など、保全に関わる費用のことです。
費用が発生した場合、すぐに賃貸人に請求できます。
有益費とは、物件の価値を高めるために使用した費用のことで、退去の際に請求できます。
ただし費用を償還する対象は、賃貸借契約書において特約を定めることができるため、何が対象になるのかよく確認しましょう。
修繕をする義務
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
賃貸人は、賃貸物件や共有スペースに問題が生じた場合は、修繕する義務があります。
例えば住居設備の故障やエントランスや廊下など、修繕義務が発生する箇所は多岐にわたります。
賃借人が賃貸人の許可を取らずに修繕をおこなった場合も、原状回復の費用を負担する義務が生じるため注意が必要です。
ただし負担する費用は、もとの状態に戻すところまでで問題ありません。
それ以上の費用は賃貸人が負担する義務はないためです。
賃借人の3つの義務
次に、賃借人が背負う3つの義務をご紹介します。
賃料を支払う義務
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
賃借人は、賃貸借契約書に定められた賃料を支払う義務が生じます。
万が一賃料を滞納すれば強制退去や裁判になる可能性があります。
契約内容を遵守する義務
第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
賃借人は、賃貸借契約書に記載されている内容を遵守する義務があります。
賃貸物件を借りる際の条件は物件によって異なるため、あらかじめ賃貸借契約書を確認しましょう。
原状回復をする義務
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
賃借人は、退去する際に原状回復をおこなう義務が生じます。
原状回復とは、賃貸物件をもとの状態に戻すことです。
しかし経年劣化や使用収益に生じた破損は、原状回復義務にあてはまりません。
つまり賃借人が故意に破損した箇所が、原状回復をする対象になります。
原状回復に関しては「原状回復をめぐるトラブルのガイドライン」に記載されていますが、法的な効力がありません。
賃貸借契約書の記載内容を重視するため、事前に確認しておくと安心です。
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賃貸人の許可が必要なこと
賃借人は、賃貸借契約書に基づく行動が求められます。
しかし賃貸借契約書に記載されている内容だけでは判断できないケースもあるでしょう。
どのような場合に、賃貸人の許可が必要なのかをご紹介します。
ペットの飼育
ペットの飼育に関しては、賃貸借契約書に記載されています。
そのためまずは、賃貸借契約書を確認しましょう。
ペット不可の賃貸物件の場合、近隣住民とのトラブル防止や物件をきれいに保つことが目的です。
入居後にペットを飼いたいと思った場合は、事前に相談すると良いでしょう。
場合によっては、ペットの飼育許可が出ることがあります。
原状回復が難しいカスタマイズ
賃借人には、原状回復をする義務があります。
そのため原則は、もとの状態に戻せるカスタマイズにしましょう。
ただし場合によっては、原状回復が難しいカスタマイズの許可がもらえることがあります。
例えばトイレの便座をウォシュレットに変更するといった機能性を向上させるカスタマイズであれば、賃借人が退去したあとも人気のある物件につながりやすくなるため、許可がもらえるかもしれません。
いずれにせよ、無断でカスタマイズするのではなく、賃貸人に許可をもらってからおこなうのが鉄則です。
のちのトラブルを防ぐためにも、口頭での約束ではなく、カスタマイズに関して書面に記載しておきましょう。
転貸
転貸とは、賃貸人から借りている物件を第三者に使用収益させることで、賃貸人の許可が必要です。
万が一、賃貸人の許可なく転貸をおこなった場合は、契約を解約される恐れがあります。
賃貸借契約をする際の注意点
ここでは、賃貸借契約をする際の注意点をご紹介します。
特約事項や禁止事項を把握する
特約事項とは、契約する賃貸物件独自の条件のことです。
敷金の返還や原状回復に関する事項などが記載されています。
特約に記載される内容は、物件によって異なるため事前に確認しましょう。
また禁止事項とは賃貸物件を契約する際に、最低限守るべきルールのことです。
賃貸人や近隣住民に迷惑のかからないように定められているため、何が禁止事項にあてはまるのかを把握しましょう。
退去する場合の解約予告日を知っておく
賃貸物件を退去する際は、事前に解約予告をする必要があります。
民法において解約予告は3ヵ月前におこなうと定められていますが、賃貸物件によっては1ヵ月前でも可能なケースがあります。
そのため賃貸借契約をおこなう前に、解約予告日を把握しましょう。
解約予告日を過ぎてから解約の旨を申し出た場合、本来であれば必要のない賃料や更新料を支払う可能性もあります。
家賃・共益費などの月々の料金や敷金・礼金・更新料などの諸条件を確認する
賃貸借契約をする際は、毎月発生する家賃・共益費などの金額や支払い期日を確認しましょう。
あわせて、振り込みや自動引き落としなどの支払い方法をチェックすることも重要です。
家賃や共益費を滞納した際に延滞金が発生する場合は、延滞利率も確認が必要です。
また、家賃の改定に関する取り決めによっては、一方的に家賃を増額されることもあります。
トラブルが発生しないように、取り決めの内容をきちんと確認しておきましょう。
敷金・礼金・更新料などがかかる場合は、具体的な金額を把握することが大切です。
特に、原状回復費用と精算する敷金はトラブルに発展しやすいため、原状回復の取り決めに関しても理解しておく必要があります。
修繕の取り決めを確認する
通常の範囲での使用によって修繕が必要になった場合、賃貸人が修繕費を負担します。
ただし、賃借人の故意や過失が原因の場合は、賃借人が費用を支払わなければいけません。
なお、賃借人が傷や汚れを発見して賃貸人に報告した際に、賃貸人が修繕をおこなわない場合は、賃借人が修繕を実施できます。
このようなルールが曖昧な場合はトラブルが起こりやすいため、賃貸借契約を結ぶ際は修繕の取り決めを把握しておきましょう。
設備と残置物を確認する
設備とは、物件に備え付けられた設備のことです。
一方の残置物は、前の入居者が置いていった家具や家電を指します。
設備が故障した際は賃貸人に責任が生じますが、残置物が故障した際は賃借人が責任を負うこととなります。
設備なのか残置物なのかによって責任の所在が異なるため、物件にある家具や家電がどちらに含まれるのかを確認しておきましょう。
原状回復のルールを確認する
賃貸借契約を結ぶ際は、原状回復の取り決めを把握することが重要です。
通常の使用によって傷や汚れが生じた際、一般的には賃貸人が修繕費を負担します。
しかし、本来は賃貸人が負担すべき費用であっても、賃借人が負担すると特約で定められているケースもあります。
退去時に発生する修繕費の負担はトラブルになりやすいポイントのため、原状回復の取り決めや特約の内容を確認し、納得したうえで契約するのが賢明です。
>>賃貸物件の原状回復とは?費用負担や相場、トラブル事例をご紹介
賃貸人の仕事
最後に、賃貸人の主な仕事内容を解説します。
賃借人への対応や管理
賃貸人の基本的な仕事は、以下のような賃借人への対応と管理です。
- 入居者の募集
- 家賃の支払い管理
- クレームや依頼への対応
- 更新手続き
- 退去への対応 など
建物、設備の管理
賃借人への対応以外に、賃貸人は建物や設備の管理もおこないます。
具体的には、日々の清掃や修繕、退去時のルームクリーニングなどが挙げられます。
経営管理
経営管理も賃貸人の仕事の一つです。
例えば、リフォーム費用や固定資産税、税理士などへの委託費用などを管理したり、各種書類を準備したりすることが挙げられます。
まとめ:賃貸人と賃借人に関する理解を深め、安心して賃貸物件を借りよう
この記事では、賃貸人と賃借人の定義や、それぞれが守らなければならない義務などを説明しました。
契約書を通してルールを定めているからこそ、お互いが安心して物件を貸したり入居できたりします。
安心して暮らせる賃貸物件を探しているなら、賃貸スタイルを利用するのがおすすめです。
賃貸スタイルでは、賃貸物件を効率的に探すことができます。
また、設備が充実していて家事の時短につながる物件や、災害対策が考慮された物件など、重視するポイントに合わせて条件を絞り込めるのがメリットです。
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